キャリアの「専門性」って必要?~自分の職歴に悩んでいる方へ~


私たちエスキャリアが運営するカウンセリングサービス(マイ・カウンセラー)には、仕事や生活に関する様々な女性の悩みが寄せられています。

「ジョブローテーションで様々な部署に行ったので、専門領域と呼べるものがありません」
「天職に出会って輝いている友人と比べ、私は『何でも屋』『器用貧乏』です。」

特に30代以降の女性から、こういった「専門性を身に付けたい」という声が多く寄せられます。今回はこのキャリアの「専門性」について考えていきたいと思います。

■10年間ジョブローテーションを経験した Aさん(30代)の事例

マイ・カウンセラーに相談にいらしたAさん。

彼女は育休からの復帰後、仕事へのモチベーションが上がらないことについて相談に来られました。彼女は入社後約10年、会社のジョブローテーションによって約3年ごとに人事異動を経験しており、「これと言った軸がないまま歳を重ねた」とおっしゃっていました。

他社で働く同年代の友人の中には、人事給与関連の部署で10年勤務、経理部門でコツコツ上位資格を取り続けている方などがいるらしく、友人たちが自分に合った仕事に出会い専門性を磨いてきたことについて羨ましさを感じ、「私も専門性の高い仕事にキャリアチェンジすべきだと思うけど、特にやりたい仕事もない」とおっしゃっていました。

1.なぜ「専門性」を求めるのか

Aさんのような方は非常に多くいらっしゃいます。新卒で入社して以降、会社主導で様々な職場を経験した方は、視野が広がった反面、心のどこかで常に「この会社を出たら自分はやっていけない」「自分にしっかりした何かが身に付いている実感がない」という焦りを抱えているようです。

さらに、出産を経験した女性は、何かの専門領域に特化することが、”育児で働く時間が短くなっても自分の価値を落とさないための手段”になると考える傾向にあります。専門分野の知識・経験を、自分を支える精神的な柱や、社会で活躍していくときの強みにしたいと考えるのです。

私たち女性にとって、仕事に専門性を持つことはキャリアの助けとなるのでしょうか?

2.様々なタイプの専門性

一口に「専門性を持つ」と言っても様々な方法があります。

過去の事例では、「長く働いていきたい」という理由で、激務だったホテル勤務を辞めて看護学校に入学し、看護師として働き始めた方や、「働いていく中で自分のやりたいことが分かった」という理由で、SEから保育士に転職した方もいます。

こうした、職業の変更や転職を伴った形がある一方で、例えば営業として働いていた方がマーケティングに興味を持ち、独自に勉強を行ったことでマーケティング部門に異動するチャンスを得て、マーケティング部門で専門性を磨いているというケースもあります。

共通して言えることは、自分自身が興味を持ったことに対して、目的意識を持って自ら行動し学ぶことで専門性を身に付けているということです。つまり、漠然とした「専門性を身に付けよう」という目的意識ではなく、もっと具体的に何かやりたいこと・興味を持てる分野に出会えたことで「結果的に専門性を身に付けた」ということなのです。

働きながら、また子育てと仕事を両立しながら、漠然とした目的意識で何かを身に付ける事には多くの困難を伴います。実際に多くの人が経験していると思いますが、昇進・昇格のために会社から言われて仕方なく資格試験を受験すると、試験勉強自体が苦痛だったり、資格に合格した後には勉強した内容をすっかり忘れてしまったりすることがよくあります。

3.長い目で自分のキャリアを考えよう

人生100年時代(※)と言われる現代においては、65歳で定年することはほぼ考えづらく、過去のどの時代の人よりも長い期間働いていくことが予想されています。そのため、焦らずに、ゼネラリストだからこそ得られる様々な種類の経験や広い視野を大切にして、「これだ!」と思ったものに出会った瞬間からスペシャリストを目指していくことも十分に可能なのです。

※リンダ・グラットン著『LIFE SHIFT』

そこで、お勧めしたいのは、まずは自分が興味を持ち、インプットする時間や労力を苦に感じないものを探すことです。

例えば、社外セミナーや異業種交流会に出ることでも見つけられると思いますし、ビジネス誌を読むこと、友人と仕事の話をしてみることもいいかもしれません。自分が今まで接してこなかった分野に意識的に接触してみると良いでしょう。また、偶然異動した先の部署が自分に合っていたという、偶然を味方に付ける姿勢も大切です。

4.さいごに~私たちは何のために働いているのか~

最後に一度、「そもそも論」に立ち返ってみましょう。私たちは何を目指して生活しているのでしょうか?そして、私たちは何のために頑張っているのでしょうか?

その問いへの究極の答えは「幸せであるため、幸せになるため」なはずです。

つまり、自分が幸せでいられる(幸せになれる)働き方をすれば良いのです。

Aさんのように様々な部署を経験した人(ゼネラリスト)と、一つの専門分野で経験を積んできた人(スペシャリスト)には、それぞれメリット/デメリットがあるため、一概にどちらが良いとも言えませんし、どちらにすべきとも言えません。

大事なことは、自分が幸せでいられるための働き方・生き方のイメージを「軸」として持ち、それを追い求めていくことです。

さらに、私たちエスキャリアのキャリアカウンセラーがお勧めするのは、「ここ2,3年の軸」を常に考え続けることです。社会の仕組みや価値観、テクノロジーの移り変わりの激しいこの時代において、「一生涯の軸」を定めることは現実味がないからです。

専門性を持つ/持たないといった話に留まらず、常に「自分が何を大事にしたいのか、どう生きたいのか、どう働きたいのか」を考え続け、その時々に一番自分が幸せでいられるための選択肢を選び続けること。それこそが、現代に生きる女性に求められたしなやかな生き方なのではないでしょうか。


この記事を書いた人

山口 奈生 さん
大学卒業後、大手損害保険会社の総合職として勤務。夫の海外留学に帯同するために、子ども二人とともに渡米。帰国後、キャリアカウンセラーの資格を取得し、第三子を出産。人材サービス会社で勤務ののち、キャリアカウンセラーとして独立。現在、再度家族で渡米し、アメリカ⇔日本のリモート勤務中の、一男二女の母。