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部下の妊娠・出産、上司の本音は? 部下と上司、それぞれの思い込みとすれ違い(2)


前回は部下の思い込みによるすれ違いについてお話しました。(部下の妊娠・出産、上司の本音は? 部下と上司、それぞれの思い込みとすれ違い(1))

今回は上司の思い込みによるすれ違いについてお話したいと思います。

管理職も悩んでいる??

管理職向けの労務管理研修を行うと管理職の悩みの1つとして必ず出てくることに、部下の妊娠・出産・育児に関する問題があります。

・妊娠中の部下にどれだけ勤務時間などの労務上の配慮をすべきか?
・育休から復帰した部下の業務量や業務内容はどうすべきか?
・育児中の社員の個別事情をどこまで考慮すべきか?

などが悩みごとや困りごととして話題にあがり、時には参加者同士の議論にまで発展する事もあります。

同じ組織で同じルールのもと部下のマネジメントをしているはずですが、管理職によって少なからず考え方や捉え方に違いがあります。またどれが絶対に正解というものでもないこともあり、管理職にとっても扱いの難しい問題のようです。

判断基準は自分の経験?

そして、議論を聞いていると頻繁に出てくる言葉があります。それは、「前の部下は…」「私の妻の場合…」「私が子供を産んだ時は…」などこれまでの自分の経験をもとにした言葉です。

『人間は経験の動物』とも言われるように、自分の経験してきたことは想像がつきやすく理解・共感しやすいため、われわれ人間は無意識のうちに自分の経験則に基づいて物事を判断する傾向があるのは当然のことと言えるかもしれません。

しかし、当然ながら人それぞれ置かれている状況・条件は異なるため、自分の経験からの判断が他のケースにも必ずしもあてはまるというわけではありません。

同じ「妊娠」でも、たとえば人によって悪阻が重い人もいれば、そうでもない人もいます。
同じ「育児」であっても、近くに両親がいてサポートを得やすい人もいれば、両親が遠方にいてサポートを得られない人もいます。

上司がこういった事情を考慮せずに「妊娠中の部下」、「育児中の部下」などと一括りにしてしまうことで生じるすれ違いが実は沢山あります。

妊娠を報告したAさんの例
Aさんは妊娠が分かってすぐ上司(男性、30代前半)に報告しました。少し前に自分にも第1子が生まれたばかりと言う上司は非常に喜んでくれました。そして悪阻でかなり辛い思いをしてきた奥さんを見てきた上司はAさんに、とにかく無理をしないよう伝えると共に全面的にサポートすることを約束してくれました。

迷惑だと思われるのではないかと不安に思っていたAさんは上司の反応に大変ほっとしましたが、暫くしてから困り果てた顔で人事部に相談に来ました。


「上司は本当に気をつかってくださるので有難いんです、ただ、あまりに過度な気遣いでだんだん困ってしまって…」と言うのです。

詳しく聞くと、Aさんは幸い悪阻も軽く通常勤務できるにも関わらず、上司は何度も在宅勤務や時差出勤を勧めてくるということでした。厚意で言ってくれているのが分かるため何度も断るのは悪いと思い数回在宅勤務をしたものの、自分だけが妊娠を理由に特別扱いされていることでチームメイトに対して申し訳ない気持ちがありったようです。また他の課の妊娠中の同僚からは不公平と思われているようで居心地が悪いというのです。

上司が自分の経験をもとに良かれと思いこんで対応したことが、逆に部下を困らせてしまったケースと言えるでしょう。

時短勤務中のBさんの例
Bさんは育休から復帰しそろそろ1年が経過します。復帰以来、保育園のお迎えのため4時に退社する時短勤務をしています。そのBさんがある日、「上司(男性、40代後半)から時短勤務をやめるように暗に言われました。これってハラスメントですよね!?」と人事部に相談に来ました。

話を聞くと、Bさんと同じチームにはBさんよりも半年早く復帰したワーキングママがもう一人おり、上司はその人がフルタイム勤務で時には残業もしていることを例に出し、「そろそろBさんもフルタイムに戻したらどう?その方がもっとパフォーマンス発揮できていいと思うよ」と言ってきたということでした。

「同僚は歩いて5分の距離に両親がいてお子さんを預かってくれるんです!!でも私は違います。私も夫も両親は遠方だし頼れる人がいないので時短しないとやって行けないんです…」と涙ながらに訴えてきました。

これも上司が他の部下を基準にした思い込みで判断したことですれ違いが生じた例と言えます。

自ら発信していく

どちらのケースも上司の思い込みにより生じた問題です。先にも述べたとおり、上司に限らず人間は自分の経験をもとに判断しがちなところがあります。

経験が少ないほどその傾向は強いため、特に管理職になってまだ間もない上司や女性部下を持つ事にまだ慣れていない上司などは限られた経験をもとにしか判断できないため、判断が偏る傾向があり、それが部下と上司の間のすれ違いに発展していきます。

このようなすれ違いを回避する為には、言わなくても上司に理解してもらうこと、察してもらうことを期待するのではなく、上司が判断しやすいようにむしろ部下の側から自分の状況や状態について積極的に発信していくことが重要です。

実際どちらの上司も悪気があったわけではありません。
部下からの相談を受け各々の上司に人事から話をしたところ、良かれと思っての対応が逆効果だったことに少なからずショックを受けると同時に、「それならそう言ってくれれば良かったのに・・・」とがっかりもしていました。

まとめ

ここ数年の少子化対策の流れもあり、妊娠、出産、育児関連の制度は度々改訂され、またそれらを理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いを禁止する法律ができるなど、取り巻く環境は確実に改善しているといえます。

とは言え、運用面ではまだまだ課題が多いのも事実のため、これからは制度というハードをいかにうまく運用していくかのソフト面の改革・改善が課題となります。

もちろん上司が察してくれる事が一番ですが、そこには限界もあれば、そもそも察する事が不得意な上司もいます。特に男性の上司はその傾向が強いといえます。

そのため、前回の「部下の思い込みから来るすれ違い」でもお伝えした通り、部下の側からのコミュニケーション、上司への働きかけが今後何よりも重要なカギとなり、それが働きやすい職場環境に結果的に繋がるといえるのではないでしょうか。

 


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