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ブランクを強みに!?「キャリアブレイク」という考え方


 

あなたは、離職期間を経験したことがありますか?

筆者は、結婚と、出産・育児のため三度の離職期間を経験しました。その期間は合わせて約5年。当時は、「こんなに仕事から離れて大丈夫だろうか」「もう元に戻れなくなるのではないか」と、焦りや不安を感じたものでした。

実際、エスキャリアのカウンセリングサービス、マイ・カウンセラーにいらっしゃる方にも

「子どもを持つにはキャリアを中断しなければならない、そう思うと怖い」
「周りはキャリアを順調に積んでいるのに、自分だけ何もできていないようで焦る」

など、マイナスに考えてしまう方が多くいらっしゃいます。

渦中にいるあなたが、離職期間を「ブランク」と捉えず、もっと前向きに捉えられるようになるには?

今回は、離職期間を肯定的に捉える「キャリアブレイク」という考え方についてご紹介したいと思います。

離職期間は「ブランク」なのか?

離職の渦中であった当時、筆者の心の中には、「キャリアは中断することなく積み重ねていかねばならない」という思いこみが根強くあったように思います。だからこそ、「ブランクである離職期間は、長くなってはいけない」「できるかぎり早く復帰しなければならない、そうしなければ復帰できない」と、自分で自分を押さえつけ、苦しんでいた時期がありました。

しかし、今、当時を振り返ってみると、その期間があったからこそ、より「働きたい!」という思いを強くしましたし、その間に学んだこと、身に付けたこと、出会えた人、出会えた仕事は、今の筆者に大きな影響を与え、背中を押してくれたと感じることもできるのです。この経験を、「ブランク」という言葉でまとめてしまうのは、もったいないことのように感じます。

もちろん、キャリアを中断することなく積み重ねていけることは、素晴らしいことです。
しかし、人生100年時代といわれる今、これから何十年とキャリアを積み重ねていく上で、予期せぬ出来事や変化に直面することは、誰にでも起こり得るのではないでしょうか。

そうした予期せぬ出来事や変化に直面し、もし離職を余儀なくされたとき、「離職期間=ブランク」という思い込みを少しでも手放すことができれば、当時の筆者のように苦しまなくてすむのではないか?と思うのです。

離職期間を肯定的に捉える!「キャリアブレイク」という考え方

ここでご紹介したいのが「キャリアブレイク」という考え方です。

*1 *2これを研究されているのは、法政大学大学院政策創造研究科の片岡亜紀子さんです。
片岡さんは、同科の石山恒貴教授のもとで、「キャリアブレイク」を「*3その後のキャリアにつながるよい経験ができたと本人が主観的に考えている離職期間」と定義し、離職期間の全てを「ブランク」と捉えるのではなく、肯定的に捉える側面に焦点をあて、研究を行われました。

片岡さんの研究によると、キャリアブレイクを経験した女性は、様々な挫折感や停滞感を経験しながらも、葛藤・内省 → 変化の受容 → 自分に対する振り返り → 自分の展望の明確化 → 展望に向けた主体的な小さな行動の開始、という一連の心理的なプロセスを経験されていたとのこと。

キャリアブレイクを経験した女性たちも、最初から離職期間を前向きに捉えることができていたわけではない、ということが分かります。

また、片岡さんのお話で興味深かったのは、離職期間を肯定的に捉えるためには、①先述の心理的なプロセスと、②特に意識から行動に繋げていくこと、このふたつの段階を経験することが必要という点です。

そして、その行動の一歩目をまずは踏み出すためにも、興味があることについて人に話す、調べる、というような、気軽にできる、ほんの小さな行動から始めることが大切であり、そういった行動により不安感が軽減されることも明らかになっているとのこと。

そのほんの小さな行動をきっかけとして、人との繋がりを作ることや、新たな経験、徐々に難易度の高い経験などを少しずつ積み重ねていくことで、自己効力感が徐々に向上し、肯定的な結果をもたらす離職期間を経験することができるのではないか、と示唆されています。
※Bandura(1977)が提唱した概念で、必要な行動をうまく遂行できるという自分への期待感や自信のこと

離職中は、筆者のように、思い込みに縛られ思い悩むこともあれば、不安から「とにかくなにか始めなければ」と焦ってしまうこともあると思います。最初から、難易度の高い目標を目指してしまい、一歩踏み出すことをためらう方もいらっしゃるかもしれません。

でも、まずは自らの心の声に耳を傾け、整理し、「自分が何をしたいのか」を振り返り、その心の声を元に、前向きに小さな一歩を踏み出すこと。

そして、その小さな一歩こそが、あなたの不安を減らし、新たなきっかけとなり、離職期間を次につなげる「キャリアブレイク」として捉えられる力になるのではないか、という片岡さんの示唆は、あなたの背中を優しく、強く、押してくれるように感じます。

人は転機を乗り越え、成長していける

離職期間というと、どうしてもネガティブな側面に目が行きがちです。しかし、離職期間中に、これまでとは異なる役割(母、妻、地域活動、学生など)を担うことで、これまで気づかなかった価値観や気づきに出会うこともあり得ますし、新しい人との繋がりが見つかるかもしれません。その役割の中で得られるスキルもあるのではないでしょうか。

今回ご紹介した「キャリアブレイク」のように、自ら意識・行動していくことによって、離職期間を「その後のキャリアにつながるよい経験ができた期間」というように、肯定的に捉え直していくこともできるのです。

そうして、離職を「転機」として乗り越えていくことで、あなたにとって、意味のある経験に変えることができるのではないでしょうか。

筆者と同じような思いに苦しんでいる方は、一度キャリアカウンセラー(マイ・カウンセラー)に相談してみませんか?心に抱えるモヤモヤを整理して、あなたの小さな一歩を踏み出すきっかけが見つかるかもしれません。

<参考文献>
*1 片岡亜紀子・石山恒貴(2016)「キャリアブレイクを経験した女性の変容―パソコンインストラクターを対象とした実証研究―」
*2 片岡亜紀子(2018)「女性の離職経験が復職後の自己効力感に及ぼす要因の検討」
*3 石山恒貴(2015)「時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる」

<関連コラム>
ブランクからの復職 あなたなら何から始める?

 


この記事を書いた人

松井 美佳 さん
大学卒業後、システムエンジニアとして勤務。その後、人材業界に転身。企業や行政機関での転職支援を経験、キャリアカウンセラー資格を取得。結婚・出産を経て、現在はフリーのキャリアカウンセラーとして、リモートワーク中心にキャリアカウンセリングのほか、ダイレクトソーシング・コラム執筆などにも携わっています。二児の母。
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