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部下の妊娠・出産、上司の本音は? 部下と上司、それぞれの思い込みとすれ違い(1)


私たちエスキャリアが運営するカウンセリングサービス(マイ・カウンセラー)には、日々様々なご相談が入ります。

社内でどうキャリアを積んで行くか悩んでいる、転職すべきか迷っている、キャリアチェンジしたいが方法が分からない、管理職を打診されたが自信がない…などご相談内容は多岐に渡りますが、妊娠中の方や育休・育児中の方からのご相談も沢山いただきます。 

育休取得率はアップも、その一方で…

ここ数年、出産しても働き続ける女性は増えており、実際、厚生労働省の調査でもこの10年の女性の育休取得率は高い時で90%超、平均しても80%を超えているなど、高い水準で推移しています。(厚生労働省「平成28年度雇用均等基本調査」より)

これは、国の少子化対策で法律が制定・改訂されるなど、ハード面で環境が整備されたことで、育児中でも格段に働きやすくなってきていることが背景にあります。

が、その一方で、妊娠中や育児中に悩みや不安を感じている方は依然として多く、実際マイ・カウンセラーにも

・出産後も働き続けたいが、先輩ママを見ていると本当に両立できるのか今から不安だ
・育休から復帰したが、上司や同僚のサポートや理解が得られず思ったよりも大変…早くも挫折しそう
・せっかく復帰したが、ルーティンワークになり以前ほどやりがいを感じられない

など、ハード面の整備では解消しきれない、ソフト面での悩みや不安に関するご相談が沢山あります。

思い込みによるすれ違い

違反すれば罰則があったり、是正が求められたりする法律などと異なり、上述のようなソフト面における悩みや問題は、解決のための絶対的な方法があるわけではなく、また会社のカルチャーや上司や同僚の考えや感覚などによるところも大きいため、解決が簡単ではないのも事実です。

とはいえ、筆者が実際に人事担当者として見聞きしてきた中には、上司と部下それぞれの「思い込み」が両者の間にすれ違いを生んでいるケースや、ほんの少しだけコミュニケーションを密に取っていればすぐに解消できたと思われる問題も少なからずあります。

復帰を急いだAさんの例

入社後まもなく妊娠
30代前半のAさんは派遣社員を経て、数か月前に正社員として採用されました。念願の正社員になれたことが嬉しく、毎日頑張って仕事をしていたAさんでしたが、半年ほどした頃妊娠が分かりました。ずっと子どもは欲しいと思っていたので嬉しい反面、正社員になって半年での妊娠は正直想定外でもありました。

入社早々、上司や同僚に迷惑をかけてしまうと申し訳なく思ったAさんは、出産後は3か月で復帰する予定であることを上司に伝えることでAさんなりの誠意を示すと共に、出産後も変わらず働く意思を示したつもりでした。

ところが、上司からはそんなに復帰を急がず、もっとゆっくり休んだ方がいいのではないかと言われてしまいました。

復帰が早いほど上司も同僚も助かると思っていたAさんは、上司の反応に拍子抜けすると同時に、「やはり入社後すぐの妊娠は非常識だと思われ、迷惑に感じているに違いない」と思いこみ、とにかく1日でも早く復帰してマイナスイメージを挽回することを心に決め、休職に入りました。

出産後の誤算
無事出産したAさんでしたが、初めての出産、初めての育児は思っていた以上に大変でした。もともと体力には自信があり、姪や甥の育児も手伝っていた経験から育児の大変さも分かっているつもりでしたが、実際には慣れない事の連続で体力的にも精神的にもきつく、出産後早々本当に3か月で復帰できるのか?復帰できても本当に働けるのか?という不安と焦りを抱くようになりました。


そんな不安を抱えながら復帰まで1か月となった頃、上司から様子を尋ねる連絡がきました。Aさんは迷いながらも勇気を出して、思ったよりも育児に苦戦しており仕事に戻れる自信が持てないこと、戻ったとしても本当に働けるのか不安に思っていることを正直に話しました。

すると上司から、育休期間は繰り上げ・繰り下げそれぞれ1回ずつできるため(※注)、育休期間の延長を検討したらどうか提案を受けました。
(※『育児介護休業法』 第7条 「育児休業開始予定日の変更の申出等」 参照)

上司の本音
上司から厳しい言葉が返ってくることを覚悟していたAさんは、上司の思いがけない言葉にホッとすると同時に、「やっぱり期待されていないんだ」「私がいなくても問題ないなら、復帰しても居場所はないかもしれない…」とまた別の不安に襲われました。

が、そんなAさんに対し上司は、実は過去に出産後すぐ復帰した部下が、結局、体力的・気持ち的にいっぱいになり退職をしたこと、それが今でもとても心残りでAさんには同じようになって欲しくないと思っていること、Aさんには長く働いてもらいたいので今焦って欲しくないという気持ちを伝えました。

更に、Aさんには自分の気持ちをきちんと伝えたかったけれども、「マタハラ」ととられてしまうことも不安で、つい遠慮してしまったとも伝えてくれました。

これを聞いたAさんは、良かれと思っていたことが実は逆に周囲の迷惑や負担となる可能性があることや、上司の助言はこれまでの経験に基づくものであり現実的であること、とは言え上司の立場では強く言いにくいこともあることに思い至り、もっと自ら積極的に上司とコミュニケーションをとり、上司の思いを知る努力をすべきだったと反省しました。

まとめ

なるべく迷惑をかけたくない気持ちや極力後れを取りたくない気持ちから、復帰を急いだり出産ギリギリまで働こうと頑張ったりしがちですが、妊娠・出産・育児には常に想定外の事が伴います。

ギリギリで予定を組むのではなく、常にある程度の時間的・気持ち的余裕をもってスケジュールを組む方が、結果的に自分自身にとっても周囲にとっても負担軽減に繋がることもあります。

また、勝手な思い込みや自分1人の一方的な気持ちで推し進めるのではなく、上司とよくコミュニケーションをとりながら何が自分にとっても周囲にとってもベストかを一緒に考えたうえで決めていくことも、スムーズな復帰には有効です。

次回は、上司の思い込みからくるすれ違いについてお話します。


この記事を書いた人

上杉麻里 さん
キャリアカウンセラー
大学卒業後、不動産会社の人事としてキャリアをスタート。以降、日系・外資系のコンサルティングファームや消費財等、多様な業界に勤務。30代前半に留学によりキャリアを中断、その後派遣や契約社員等を経て、30代半ばで管理職となるなど、様々な働き方や立場を経験。現在は、働く女性を中心としたキャリアカウンセリングや人事制度コンサル、研修等を行う。
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