2016年4月から、「キャリアコンサルタント」という新たな国家資格が誕生しました。
これまでもキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタントという名称の資格や国家検定はあり、キャリア支援のプロとして活躍されている人は多くいましたが、国家資格化される、ということはつまり、”国を挙げてキャリア形成支援のプロフェッショナルを育てていく”という目的があります。
なぜ今、キャリア支援のプロが求められているのか、そしてキャリアコンサルタントの仕事である「キャリアカウンセリング」とは何なのかについて、お伝えしたいと思います。
そもそもキャリアって?
そもそも「キャリア」とは、どういう意味か、明確に答えられる方は、そう多くないかもしれません。
「キャリア」というフレーズはメディアでもよく飛び交っていますし、日本語にすっかり定着した感があります。「仕事」「職歴」などの意味合いで使われることが多い「キャリア」ですが、実はキャリアの意味はそれだけではありません。
本来キャリアとは、就職・現在の仕事・昇進など、仕事に関わることだけでなく、「個人の生涯に通じた、職業選択に関する活動・心構え」「個人の生涯に通じた、仕事に関わる生き方のプロセス」の意味を持ちます。
■キャリアの意味
個人の生涯に通じた
・職業選択に関する活動・心構え
・仕事に関わる生き方のプロセス
「キャリアを重ねる」ということは、なんらかの仕事の経験を積むという事だけではなく、その仕事に取り組む中で、身につけていく技術・知識・経験に加え、人間性や、プライベートを含めた「自分自身の生き方を磨いていくこと」だとされています。
つまり、仕事を中心とした、その人の「人生そのもの」がキャリアなのですね。
キャリアとは、なにか1つの“点”ではなく、紡いでいく“線”のようなものだと考えてください。
(これらの考え方は、「育休中にできる「キャリアの棚卸し」。キャリアカウンセリングの現場でも使われる2つのワークをご紹介」でも詳しく紹介しています。ぜひ合わせてお読みください)
なぜ今、キャリア支援が必要とされるのか
ちなみに、キャリアという考え方が広まってきたのは、比較的最近のことです。
昔は、職業の選択肢も少なく、進路や職業で悩む機会そのものが少なかったですし、戦後の高度経済成長期からバブル期までは、「いい大学」から「いい会社」に進んでの終身雇用、が当たり前でした。就職した会社の中での異動や昇格によってほぼ進む道が決まっていったので、自分のキャリアを深く考える必要はありませんでした。
それが、バブル崩壊後、一転しました。終身雇用制の崩壊、就職氷河期、長引く不景気、リーマン・ショック、非正規雇用者やフリーターの急増など、個人の「働く」を取り巻く環境はここ四半世紀で劇的に変わりました。多くの人が「企業に入れば安泰、という時代は終わった」と悟りはじめた一方で、自分自身のキャリアをどう作っていけばいいか、迷う人が増えてきました。
また、グローバル化やITの進化によって、日本人以外・人間以外に取って代わられる仕事も増え、「何のために、どんな仕事をしていくのか?」をより一層考えざるをえない状況になってきています。(オックスフォード大の准教授が発表した論文の中の、「2020年に無くなる仕事」が昨年世界中の話題を呼びました)
このような社会環境の変化の中で、今求められているのは、自分自身の能力や経験を把握しながら、自己責任でキャリアを形成していくこと、つまり
「自分自身で自律的にキャリアを切り開く人生」
だとされています。そのため、国も今、総力を挙げて、キャリア形成支援のプロである、キャリアコンサルタントの創出に励んでいるのです。
キャリアカウンセリングとは?
では、具体的に「キャリアカウンセリング」では、どんなことを行うのでしょう?
私たちは、人生の大半の時間を「働いて」過ごしています。
そして仕事について・働き方についての悩みや不安は、仕事そのものだけでなく、家庭や人間関係など、人生そのものにも大きな影響を及ぼします。
個人が自分自身の人生を考えるときに、仕事を切り離して考えることはできませんよね。
そこでキャリアカウンセリングでは、相談者が抱えている問題、例えば下記のような相談に対し、適性や適職を見つけ出しながら、今抱えている課題や悩みを解決へと導くとともに、仕事を中心とした「生き方」そのものへの援助や支援を行っていきます。
■キャリアカウンセリングで相談される内容例
・自分はどんな仕事に適性があるのか
・今の会社でこれからどんなキャリアを描いていけばよいのか
・出産、子育て期など、ライフイベント中は、どうやってキャリアを形成していけばよいのか
などの相談を受け、適性や適職を見つけ出しながら、今抱えている課題や悩みを解決へと導くとともに、仕事を中心とした「生き方」そのものへの援助や支援を行っていきます。
通常キャリアカウンセリングは、1対1の面談形式で実施します。キャリアカウンセラーがカウンセリングの様々な技法を用いて問いかけることで、相談者は、本当は何を大切にしたいか、選択の軸をどうするか、など、絡まっていた心の中を整理していきます。
つまり、
相談者とカウンセラーの対話の中で、相談者の悩みや課題がクリアになり、自己理解が深まり、よりよい意思決定や職業選択ができるようになっていく。
それがキャリアカウンセリングのプロセスです。
キャリアカウンセリングは、学生・社会人に関わらず、「働くこと」にまつわる悩みに直面している方に対して行われます。「働くこと」にまつわる悩みといっても、実は人間関係や家庭の問題が根っこにあったり、職場でのパワハラなどが原因だったり、悩みが心身に影響を与えていたりすることも少なくありません。
そのため、キャリアカウンセラーは、キャリアにまつわるどんな相談にも対応できるよう、キャリア理論やカウンセリングスキルだけでなく、心理学・人事労務・メンタルヘルス・労働関連法令、市場動向などの専門知識を習得し、常に自己研鑽を続けています。そのうえで、相談者に対する深い共感性を持ちながら、水先案内人として導き、また伴走者として支えていきます。
キャリアカウンセリングを受けるには
キャリアカウンセリングを実施している機関は、実は色々とあります。
代表的なものを以下に挙げます。
・自治体(ハローワーク/しごとセンター/女性キャリアセンター等)の窓口に相談する(無料)
・人材紹介会社・転職サービス等に登録し、面談を受ける (無料)
・キャリアカウンセラーの資格認定を行っている協会主催のセッションに申し込む (有料/無料)
・キャリアカウンセラーに個別に依頼する (有料)
いずれも専門性や相談料の面でのメリット・デメリットがありますので、ご自身のニーズに応じて活用されることをおすすめします。
例えば、無料カウンセリングの多くは、職業紹介をゴールに据えたものです。人材紹介会社の面談は無料ですが、成功報酬型(=求職者がご入社すると企業からフィーが支払われる)のビジネスであるため、企業の採用ニーズに応える範囲での面談になります。
自己負担費用がかからないというメリットはありますが、相談の目的が「就職」「転職」ではない場合は、そもそも相談窓口としてフィットせず、カウンセリング内容もしっくりこなかったという声をお聞きします。
また、民間企業のキャリアアドバイザーは、有資格者でなくてもなれるため、相談経験やキャリアに関する専門性がまちまちなこともあります。
その点、自治体やハローワークの相談員は、キャリア関連の資格保持者ですので、高度に専門的なサポートを受けることができます。ただしキャリア相談イベントの場合は、行政側の目的に沿ったカウンセリングになるケースもあるので(例えば「再就職イベント」だと、再就職するかどうか迷っていても、再就職前提でカウンセリングが進むことがある)、ご自身の目的に沿ったものを選ばれるとよいと思います。
一方、有料のカウンセリングは、一般的には敷居が高いかと思いますが、個人から相談料をいただく(=企業からのフィーをいただかない)ことで、本当の意味で個人に寄り添った支援ができるという長所があります。
お金を払ってカウンセリングを受けるという文化は、まだまだ日本では浸透していませんが、キャリアカウンセリングが発祥したアメリカでは非常に浸透しており、定期的に受ける方も少なくありません。
日本でも、キャリアコンサルタントが国家資格となった背景の一つとして、国民全員に、健康を定期的に確認する「人間ドッグ」のように、キャリアの棚卸を定期的に確認する「セルフキャリアドッグ」を受けてほしい、という狙いがあります。キャリアカウンセリングは、健康や勉強のために時間・お金をかけるのと同じような、自分のよりよいキャリアへの投資ともいえるでしょう。
「この先の働き方について、誰かに相談したいけど、どこに行けばいいの?」とお悩みの方や、「キャリアカウンセリングってどんなものだろう・・・」と気になっている方は、ご自身の状況や必要性に応じて、ぜひお気軽に、お近くの窓口に相談に行ってみてくださいね。
キャリアカウンセラーは、あなたの強い味方になってくれるはずです。
エスキャリアのキャリアカウンセリングって?
私たちエスキャリアの「マイ・カウンセラー」では、女性を対象としたキャリアカウンセリング(有料)を実施しています。
キャリア関連の有資格者、カウンセリング経験・実績の豊富な女性だけが、カウンセラーとして登録されており、キャリアにまつわるどんな悩みでも安心してご相談いただくことができます。
相談者はどんな年代の方が多い?どんなことを相談したら良い?私に合うカウンセラーはいる?相談者の感想が知りたい!などは「よくあるご質問」「ユーザーアンケート結果」のページもご覧ください。