赤ちゃんが生まれたとき、育児休業が取得できることはみなさんご存知でしょう。妊娠・ご出産、育児は人生の中での大きな楽しみでもありますが、同時に、働くことができない間の収入はどうなるのか、自分は育休制度を使えるのか、手当はどれくらいもらえるかどうか、など、少し不安を感じる方が多いのも現実です。
これから数回にわけて、育休に関わる法律や、育休中にもらえるお金(給付金)等についてお話をしてまいります。その1回目、まずは、育児休業について、育児休業給付金(育休手当)について、その概要をお伝えいたします。必要な情報を知ることで、漠然とした不安も解消され、安心して育休に入っていただければと思います。
「育児休業法」とは?
育児休業についての法律は、介護休業についての法律と一緒に制定されています。正式には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称「育児・介護休業法」)」と言う長い名前があります。
この法律の目的は、これからの少子高齢化に伴い、労働人口が減っていく中で、子育て中や介護中の方が「ケア責任」と「仕事」を両立しながら働いていけるように、国として就業環境の整備をさらに進め支援していこう、というものです。
ここでは、その中の「育児休業」にしぼってお話ししてまいります。
育児休業中にもらえる手当「育児休業給付金」
いわゆる育休手当と言われている「育児休業給付金」は、簡単に言うと、産前産後休暇(出産前42日・産後56日の休暇)が終わった後、産後57日目~お子様が1歳になるまで(条件によっては1歳2ヶ月、1歳6ヶ月)、会社を休んでいるときにもらえる給付金です。
実際にいくらもらえるかというと、おおよそ、月収の67%(または50%)がもらえることになります。
例)月収:30万の場合
最初の180日=67%(20万1千円/月)
180日経過後=50%(15万/月)
※上記の月収=6か月分の給料÷180日=休業時賃金日額
休業時賃金日額×30日=上記の月収(常に一月を30日で計算)
そして、おおよそ2カ月に一回、2カ月分の給付金が口座に振り込みされることになります。
対象となる方は?
まずは、雇用保険に加入しているか、していないかが大きな条件となります。この育児休業給付金は、会社から支払われるのではなく、会社が加入している≪雇用保険≫から支払われます(毎月の給料明細で、自動で引かれている社会保険の一つです)。いわゆる政府からいただくお金になります。逆に言うと、雇用保険に加入していないと、育児休業給付金を受け取れないことになります。
そのため、専業主婦(主夫)や自営業者は対象外になりますが、パートやアルバイト、契約社員でも、雇用形態やその名称に関わらず、雇用保険に加入している方で、その他の要件を満たせば対象となります。
また、直近では、平成29年1月1日、育児・介護休業法の改正があり、有期契約で働く方の育児休業の取得要件が緩和されました。以前は、お子様が1歳になった後も雇用継続の見込みがなくてはならないという条件がありましたが、それが廃止されました。また、2歳になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかであれば、取得できないという条件もありましたが、その年齢が1歳6か月となり、要件が緩和された点は大きな改正の一つです。
また、育児をするお子様についても、法律上の親子関係がある実子・養子のみ対象となっていましたが、特別養子縁組の監護期間中のお子様、養子縁組里親に委託されているお子様等も新たに対象となりました。
もちろん、今回の改正だけでは、まだまだすべての方に対しての支援が十分とは言えないかもしれませんが、国も規制緩和やあらたな対象者の拡充などを積極的に行い、育休中の私たちが安心して休業し、また復帰できるよう、努力を重ねています。
ちなみに、退職した方や、育休に入るときに1年以内の退職が決まっている方、育休中に会社からお給料が8割以上出る方、育児休業を取得せずに職場復帰される方等は、育児休業給付金の対象とはなりません。
「雇用継続」と「職場復帰」を支援するために
また、職場復帰後、6か月間継続して雇用された場合、「育児休業者職場復帰給付金」を受け取ることも可能になります。
このように、「育児・介護休業法」で定められている具体的な支援策としての「育児休業給付金」「育児休業者職場復帰給付金」は、雇用の確保と職場復帰の支援のための制度と言えるでしょう。このような制度、給付金を知ることによって、ご出産後のライフプランをご家族で話し合うきっかけにもなれば幸いです。
今回は概要のお話となりましたが、次回からは、より詳しく、育児休業に関わる制度や給付金についてお話ししてまいります。
≪参考≫ 厚生労働省HP「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
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