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駐在妻のキャリア~外国生活の中でも「自分らしい人生」を諦めない!~


現在、約87万人(※)の日本人が海外駐在や留学などのために、世界各国で暮らしています。

※2017年10月時点の長期滞在者数(3か月以上の海外在留者のうち、海外での生活は一時的なもので、いずれ日本に戻るつもりの邦人)参考:外務省データ

海外での生活は、もはや珍しいものではなくなり、一般化してきているとはいえ、言葉や宗教、文化の違う国に暮らすということは非常に勇気のいることです。

今回は、そのような勇気ある決断をした駐在員の妻が海外生活の中で自分のキャリア(人生、生活全般)を豊かにしていく方法を考えていきたいと思います。

◆退職して駐在員の妻として海外に行く女性の悩み

海外駐在という一見華やかなイメージとは裏腹に、パートナーのキャリアのために仕事を辞めて海外に帯同する女性たちは、皆さん悩まれています。

実際に、マイ・カウンセラーに相談にいらっしゃる、駐在員を夫に持つ女性の中にも、
「海外から帰ってくる頃には、私はもう二度と働けなくなっているのではないでしょうか」
「再就職のために、外国にいるうちに取っておいた方が良い資格はないでしょうか」
「これから先、ずっと主婦でいることになるのでしょうか」

などと、不安を抱えている方を多くお見かけします。

共通することは、今まで自分が努力して勝ち取ってきた学歴、仕事の経験、能力を、海外駐在によって失ってしまうことへの不安、自分の価値が目減りするような感覚であるようです。
しかし、そもそも、仕事を辞めると、自分の価値が落ちるのでしょうか?まずはそこから考えていきたいと思います。

◆自分の価値が下がる感覚との向き合い方~ライフキャリアレインボー~

キャリア理論の中に、1950年代に米国のスーパーが発表したライフキャリア・レインボーという考え方があります。この理論では、「キャリア=職業」とは考えず、キャリアは、「人生のある年齢や場面のさまざまな役割(ライフロール)の組み合わせ」と定義しました。

代表的な役割は「子ども」「学生(学ぶ人)」「労働者(職業人)」「配偶者」「家庭人(家事全般をする人)」「親」「余暇を楽しむ人」「市民」などがあります。人は生涯にわたり、社会生活や家族の中において、経験や役割を積み重ねてゆきます。そうする事で、人のキャリアは形成されてゆくという考え方です。

過去を思い出してみると、かつては私たちも「子ども」であり、「学生」でした。そして、時に親の家事を手伝う「家庭人」であり、地域活動を行う「市民」でもありました。学校を卒業して「学生」から「労働者」に役割が変わり、次に、結婚や出産などを経て、「親」「配偶者」の役割が増えた代わりに、親にとっての「子ども」という役割が減るなど、時間とともに変化してきたと思います。

さて、「過去の自分」は今と比べて価値が低いのでしょうか?俯瞰して見ると、価値の高い低いではなく「今と違う役割を持っていた」ということに理解できると思います。

それと同じことが、会社を辞めて、駐在員の妻として海外生活を送ることになった方にも当てはまります。「労働者」という役割がなくなったとしても、自分の価値が下がったのではなく、単純に自分が持つ役割が変化したのです。

そう考えると、一時的に失った役割を嘆くのではなく、今、自分が持つ役割の一つ一つを輝かせることが、自分の人生を豊かにするコツだと思えるのではないでしょうか。

◆外国生活の中でできること

それでは、ライフ・キャリアレインボーの理論で考えた時に、どのようにしたら外国生活の中で自分の人生を豊かにすることができるのかを具体的に考えていきたいと思います。

①「学生」という役割を持つ
【語学教室に通う】
駐在先の国の言葉、または共通語として英語を勉強してみるというのはとても良いことです。言語の習得はもちろんのこと、外国人の友人ができることで、新しい発見を楽しむことができます。今まで興味がなかったニュースが気になったり、外国人の友人から聞いたおすすめレストランに行ったり、伝統行事を共に祝ったりと子どもの頃に戻ったかのような変化や成長を実感することと思います。

【資格試験の勉強をする】
せっかくできた時間を、勉強や興味のある資格の取得に充てるのも良いかもしれません。社会人生活の中で、後回しにしてきたものがあればぜひ取り組んでみましょう。語学力の証明として、「〇〇語検定」などを目指すのも良いと思います。
また、資格試験の勉強を行いながら、「そもそも自分は何をしたい人間なのか」「自分は何に興味があるのか」などの根源的なことを考えることも良いのではないでしょうか。

②「市民」という役割を持つ
外国人として外国に暮らすと、自分が社会に溶け込んでいないような疎外感を感じます。
それを解決するために、積極的にボランティア活動に参加してみましょう。例えば、ごみ拾い、マラソン大会の給水コーナー、図書館での本の仕分けなど、仮に言葉が分からなかったとしても参加できるボランティアはたくさんあります。ボランティア活動に参加することで、その地域への愛着も湧きますし、その地域の方に一員として認めてもらいやすくなります。

③「余暇を楽しむ人」という役割を持つ
海外駐在員の妻たちの中には「いつまでも海外旅行気分」と言う人が一定います。
海外生活の中で、日本に思いをはせ、自分が失ってしまった仕事を思い出して落ち込むよりも、この数年間を人生で最大の余暇、旅行として楽しもうと考えると良いのではないでしょうか?
現地の食材を食べ、近隣の街に出かける、歴史の教科書に出てきた場所に実際に行くなど、今しかできないことを目いっぱい楽しむことも長い人生には必要なことです。

◆さいごに~私たちは「子どもたちが生きる未来の世界」を生きている

筆者自身が、駐在員のパートナーを持つ者の一人であるため、外国暮らしの苦労は身に染みて感じています。
しかし、どんな苦労があったとしても心から良かったと思えることは、「私は、子どもたちが生きる『未来の世界』を生きている」と実感できることです。

日本に暮らしていると、多文化、多言語、多宗教という事をなかなか実感することができません。しかし今後の日本を考えると、労働人口の減少やボーダレス化によって、日本が更に多民族化していくことは間違いないのです。また、自分の子どもが将来海外の学校に通う、海外の会社で働くという事もどんどん身近になっていくでしょう。

そういう未来が予想される中で、今、海外で暮らすということは、言葉、人種、宗教、文化などが異なる人たちと共にコミュニティーを築いていくことであり、それは、子どもたちが生きる、ボーダレス化が進んだ「未来の日本」を一足先に体験しているのかもしれません。

その「未来」に身を置いて様々な経験をすることは、親として子どもに「生きた知識」を伝えられるという事です。これほど誇らしいことがあるでしょうか。

築き上げた仕事を手放して外国に渡るという事は、大きな決断だと思います。
しかし、外国に出たからこそ、新たなものに出会えることも事実です。人生に新たな要素を加え、諦めずに自分の人生を輝かせていきましょう。


この記事を書いた人

山口 奈生 さん
大学卒業後、大手損害保険会社の総合職として勤務。夫の海外留学に帯同するために、子ども二人とともに渡米。帰国後、キャリアカウンセラーの資格を取得し、第三子を出産。人材サービス会社で勤務ののち、キャリアカウンセラーとして独立。現在、再度家族で渡米し、アメリカ⇔日本のリモート勤務中の、一男二女の母。
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