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自分らしいキャリアに踏み出した
女性100人の軌跡
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挫折を乗り越えて見つけたライフワーク。自分らしく生きることを応援したい。

進路や職業選択の失敗、マミートラックなど、挫折を経験してきた岡本さん。飛び込んだチャレンジの末に見つけた自分らしい生き方とは。お話を伺いました。

進路に思い悩んだ思春期

幼い頃は、人目を気にせず、自由気ままに好きなことに没頭するタイプでした。幼稚園の参観日に母親が心配になって先生に相談したほど、周囲を気にせず本ばかり読んでいたそうです(笑)。

幼少期は色々な夢がありましたが、小学6年の時はすでに「医者になる」と決めていました。私の家は医療関係者が多く、結婚を機に仕事を辞めた母は、離婚後、薬剤師として再び働き、叔母も医者として働いています。経済的・精神的に自立して働いている、そんな母や叔母を見て、「女でも手に職を、国家資格を持たなければ」と勝手に思い込むようになったんです。

それからは医者になることしか考えず、進学した中高一貫校では理系に進みました。 でも高校2年生くらいから、実は興味があるのは人の内面だということに気づきはじめたんですね。思春期の頃、友達が影で私の悪口を言っているのを聞いて、ひどい人間不信になった経験があるんです。しばらくは立ち直れませんでしたが、その経験をきっかけに、人の体よりも内面、心の動きに強く興味を持つようになったんです。

ただ、ずっと医学部しか見据えていなかったので、今更進路を変える勇気もなく、本心に蓋をして過ごしていました。精神科医を一応の目標としましたが、当然モチベーションは上がらず、大学受験の結果は不合格。浪人中も「こんなことをしてまで、やりたかったことはなんだろう。」と余計に分からなくなりました。 結局、悩みながら複数の学部を受け、思春期の経験から、最終的に心理学部への入学を決めました。

やりたいことを見つけるも、最初の会社で大きな挫折

大学では様々な心理学の領域を学びました。「ああ、私はこれが学びたかったんだ!」と、すべてがしっくりきた感覚で、勉強は本当に楽しかったです。心理学を志す人の中には精神障害者や発達障害者、LGBTなど、一般社会での生きづらさを抱えている人も多く、そこで私は自分の素を出してのびのびと生活できるようになりました。

心理学を学ぶ中で、臨床家ではなく、より多くの人を健康にする研究をしたいと思うようになりました。卒論ではうつ病を未然に防ぐための脳の活性化について研究。しかし修士過程では、日本を支える世代の人が心を病む大きな原因としての「仕事」に目が向き、そこから研究手法をがらっと変え、「キャリア発達」の研究を進めました。「働くこと」が幸せであれば、大勢の人が病まずにすむと考えたんです。

ところが、研究を続けていると、研究の世界ではすでに実証されているのに、世の中の人が知らないゆえに苦しんでいることがたくさんあるということに気づいたんですね。そこで、「民間と研究の世界の橋渡しをして働く人を幸せにするような仕事をしたい」と、考えが変わりました。まずは民間で人のキャリアの支援に関わろうと思って就職活動をし、数社から内定をいただいた中で、最終的にはネームバリューに惹かれ(笑)、大手の人材紹介会社に入社しました。

将来のやりたいことにつながる!と希望を抱いて入った会社ですが、実際は会社や仕事内容とのアンマッチが大きく、またかなり長時間労働だったこともあり体調を崩し、「そもそも民間に出たのが間違いだった、研究の世界に早く戻りたい、逃げたい」と早々に思うようになりました。将来の夢も忘れるくらいの、大きな挫折でしたね。

やりがいのある仕事から一転、マミートラックに

そんな時、大学院の頃に師事していた教授に、研究機関での心理学専門職のお仕事に誘っていただき、結婚のタイミングも重なったので、転職を決めました。 研究機関では、様々な発達検査を開発・実施し、心理カウンセリングを行う仕事をしました。発達に凸凹がある子ども一人ひとりが一番能力を発揮できる方法を見立てていくという、責任の重い仕事でした。 給与は減りましたが、残業もなく心にも余裕のある人間らしい生活を送れるようになりました。自分の関わり方ひとつで、向き合う子どもや親御さん、先生が変わっていくんです。仕事に、やりがいと喜びを感じましたね。

3年目に産育休をとり、翌年に時短勤務で復帰したのですが、そこで大きな誤算に気づきました。勤務時間が短く、子どもの体調不良などで仕事に穴をあけることもあるため、責任のある仕事や出張などは任せていただけなくなったんです。ワーママが少ない環境だったこともあり、一人だけ早く帰ることへの申し訳なさで肩身の狭さを強く感じるようになりました。周りはとても気を遣ってくれていましたが、私自身はそのことを腫れ物扱いをされているように感じてしまいました。

限られた時間の中で効率的に仕事をする努力を必死でしているつもりでも、時短ゆえ給料も下がり、事務的な周辺業務が増える。当時31歳でしたが、もし子どもを2人産んだら、責任ある仕事ができるのは40歳過ぎてから?と思い至り、それまでは前に進めないことに愕然としました。

責任持って仕事をしたい、周囲に謝り続けるのは辛い、勤務時間が短くても貢献できる仕事のやり方があるはず、と思いながら、悶々とマミートラック*にはまっていた時に再会したのが、エスキャリア代表の土屋でした。

*マミートラック:仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコース。

専門性を活かせる環境と自由な働き方を求めて

土屋とは、1社目の同期だったんですが、当時はほとんど接点がありませんでした。退職後数年して、久々に同期の集まりで再会。当時すでにエスキャリアを設立し、キャリアカウンセラーをしていた土屋に、発達障害を持つ学生への対応についてアドバイスしたのがきっかけで、その後定期的に連絡を取り、キャリア支援の話などをするようになりました。

2人目の子を授かった時、なぜか真っ先に土屋に連絡したんですね。いよいよこれからキャリアをどうするか決めなければという焦りの中、土屋に相談したら「自分でやってみたら?」と(笑)。 彼女らしくのびのび楽しそうに働く土屋を見て、私も、自分で裁量を持って仕事をしたい!子どものいる妊婦でもPCひとつでできることもあるはず!という思いがむくむくと高まってきたんですね。自分が大学院の時から本当にしたかった「キャリア支援」を、自由なスタイルでやってみたいと。土屋に相談した3ヶ月後には独立して、フリーランスとしてエスキャリアに参画しました。

当時のエスキャリアは土屋と城と私の3人だけでした。最初はいちフリーランスとしてキャリアカウンセリングや講師の仕事から始め、無事に2人目を出産。産後は在宅で仕事を再開し、その後色々なタイミングが重なって翌年には執行役員に、更に昨年、代表取締役COOに就任しました。現在はエスキャリアの経営企画をメインで担うとともに、営業やキャリアカウンセリング、講師業も積極的に行っています。

誰もが「自分らしく生きる」ことを応援したい

今、私はエスキャリアをライフワークとしています。「自分が本来の自分らしくある」ためにやっているような感じです。自分自身が「らしく」いられずにもがいてきたからこそ、誰もが「自分らしく生きる」ことを応援したい。これからも、エスキャリアに共感してくださる仲間を集め、チームとして、またひとつのカルチャーとして発信していきたいと思っています。

その中でも今私が注力しているのは自社の人材育成です。今までは、ビジョンに共感して集まってくれた人が自然と増え続けてきた、ではどうすればそのビジョンを全員で本当に実現できるのか。そこに向けて内部の人材を育てることに尽力しています。キャリアカウンセラーの社会的地位や、キャリアカウンセリングの質をもっと向上させたいですし、とにかくメンバーの幸せを作り出すことを目指していきたいですね。

私個人としては、昔から座右の銘が「Carpe Diem(その日を摘め・今を楽しめ)」なので、いつ死んでも悔いのないように、「いつも楽しそうだな」と思われるように、生きていきたいですね。私に一歩踏み出す勇気をくれた、最愛の子どもたちにも、自分らしいキャリアを見つけて切り開いていってほしい、自立を応援して見届けたいと思っています。

今思えば、私は子どもの頃は自由気ままで周囲を気にしないような子だったのに、そこから一生懸命、自分の持ち味ではない「型」に自分自身を嵌めようとしてきたんですよね。進路や就職の選択時にも、「自分の本心」というものになかなか向き合えなかった。勇気がなかった。 今は、遠回りはしましたが、自分らしくのびのびと、楽しく仕事をができています。

これからも一人ひとりが、本当の強みや軸、かけがえのない才能に気づいて、それを高める生き方をしていける。そういうキャリア形成のお手伝いをしたいです。女性に限らず、生きにくさを抱えているすべての人に。人が自分らしく、持っている力を発揮して働き、よりよい生を生きるお手伝いを、私は一生をかけて、自分ごととしてやっていくんだろうなと思っています。


岡本 真梨子 さん
30代後半 / 株式会社エスキャリア 取締役社長

大学院(発達心理学)修了後、人材紹介会社の人事部に入社。結婚を機に文科省所管(当時)の教育研究機関へ転職し、心理カウンセリングや研究開発、セミナー事業等に従事する。 出産後、時短勤務を経験する中で、女性が柔軟に能力発揮できる機会や文化の重要性を感じ、2013年に株式会社エスキャリアへ参画。2016年10月に代表就任。一男一女の母。

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