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自分らしいキャリアに踏み出した
女性100人の軌跡
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30代で家業を承継、40代で転身、50代で独立。人とのご縁でキャリアは繋がっていく。

人材紹介業を営み、キャリアカウンセラーとしてキャリアカウンセリングにも携わる岩波さん。人とのご縁により繋がっていった岩波さんのキャリアの変遷とは?お話を伺いました。

商売人の父からの教えと、男女平等という価値観の形成

高度成長期が始まる、昭和30年代の東京で生まれました。

父は、婦人ベルトなどの革製品を扱う専門商社を営んでいて、「商売をするならこういうことに気を付けなければいけない」「信頼関係が大事だ」といった教えを、幼い頃から受けていました。

ある日、父と近所のスーパーに行くと、街頭販売が行われていました。それを見た父に「値切ってこい」と言われ、販売価格より少ないお金を渡されたんです。実際に値切れたかどうかは忘れてしまいましたが、父にそういう教育をされたのが、おもしろかったです。

小学生の頃は、女子で初めて廊下に立たされたことがあるくらい、おてんばでした。恥をかくのは、この頃から平気でした。

男尊女卑の考え方が主流で、クラスの男子が「女性よりも男性のほうがえらいんだよ、認めろよ!」と言ってくるのに対し「そんなことはないわ!男女平等よ!」と、よく言い合っていました。幼稚園がミッション系だったので、「神の前に人は平等」という教えが染み付いていたんです。

男の子とケンカをしている私を見て、先生たちは私のことを「かわいそうだ」と言ってきましたが「対等に言い合いをしているだけなのに、なんでかわいそうだと思われなきゃいけないの?」と、納得できませんでした。

中学、高校と一貫教育の女子高に通いました。友達に恵まれ、仲良しグループができました。別々のクラスになってからも、休み時間になると集まったり、一緒の部活動に入ったり。何でも話せる仲良しがいるっていいことだなぁと感じていました。

家業を継ぐために学ぶ。人事管理のゼミに熱中

高校生になると、父の仕事を継ぎたいと思うようになりました。一人っ子で責任も感じていましたし、父のことが大好きだったんです。父の商売も右肩上がりでした。

父の仕事を継ぐために、大学で何を勉強しなければならないのかと考えたときに、社会学部がいいと思いました。社会学部なら、商業簿記や経済学など、商売に役立つ知識が学べ、興味のある心理学や社会学の勉強もできると思ったからです。推薦で入れる大学の社会学部には、近代経済学に精通した優秀な先生方がそろっていたので、興味を惹かれました。

学年の半数以上が、その大学の英米文学科へ推薦で進む中、私は「仕事で生きていきたい」と思っていたので、社会学部に進学することにしました。迷いはなかったです。

大学では、人生の師となる、人事管理のゼミの先生にめぐり会えました。父が「人事が一番大変。人を扱うから」と言っていたので、だからこそ勉強しなきゃいけないと思い、人事管理のゼミを選びました。

ゼミの先生のアシスタントのバイトに加えて、週に1~2回、父の会社でアルバイトもしました。父の商売を継ぐにあたり、本格的に父の商売に対する理解を深めました。

大学卒業後は、父の会社に入社するつもりでいました。でも、ゼミの先生に海外留学を勧められたんです。「将来、父の仕事を手伝うなら、海外に行く機会なんてないだろうし、せっかくここまで先生が勧めてくださっているんだから」と、留学試験を受けることにしました。受からなかったら諦めようと思っていたのですが、無事に合格。ミネソタにある大学への留学が決まりました。

留学では、勉強よりも「世界がいかに広いのか」を学びました。生まれて初めて、外国での暮らしを経験して、移民の国アメリカで生活することで、世の中にはいろいろな人がいて、様々な思いや生き方があることを学びました。ダイバーシティを身をもって体験しました。

家業の社長に就任。バブル崩壊で自主廃業へ

2年間の留学を終え、帰国すると、すぐに父の会社で働き始めました。最初の1年は、大学で学んだ人事関係の知識を生かし、経理や採用関係に携わりましたが、次第に「営業をやらなきゃ」と思うようになったんです。小さな問屋は営業が花形。営業を知らないと社内で発言権がないなと感じていました。

2年目になり、営業に配属されました。百貨店に商品を卸していたのですが、売り場の男性、女性との人間関係はとても勉強になりましたね。数々の試練がありましたが、人間としての常識の一線を超えない限りは、「すべては売上のため、会社のため、そして自分の成長のため」と乗り越えました。

入社して8年が経った頃、父が亡くなりました。突然のことでした。その頃、私はまだ30代前半でしたが、社長に就任することになりました。

社長になって初めの5年間は、新規事業の立ち上げや、業務効率化などの甲斐あって、過去最高益を達成するなど順調でした。でもバブルが弾け、ベルトの人気が下がり出し、「どう手を打てばいいのか…」と思っているうちに、どんどん売り上げが下がってしまったんです。

大学時代から師事していた方や、お世話になっていた弁護士の方に役員として参画していただき、なんとか立て直しを図ろうとしました。しかし、何ともならず、社長になって10年目に、自主廃業することを決意しました。

人とのご縁からキャリア職に転身、広がりを増した人脈

次にどんな仕事をしようかと迷い、人生を振り返ってみたところ、大学時代に人事関係の勉強をしたことを思い出しました。その知識を生かせる仕事ならと、いくつかの企業に履歴書を送ってみましたが、40代で事業を廃業した私を採用してくれる企業は、なかなか見つかりませんでした。

同時に、周囲の人に仕事を探していることを伝えたところ、大学時代の恩師から、エグゼクティブサーチ会社のお話をいただくことができました。とてもありがたかったですね。

エグゼクティブサーチ会社では、クライアントから依頼された条件に応じて候補者を探し、メールや電話でコンタクトを取り、引き合わせる仕事を担当しました。小さな会社だったので、他にも一から十までいろいろやりました。社長と一緒に仕事ができたので、会社の仕組みを学べたのが、とても勉強になりましたね。この仕事に就いたことがきっかけで、キャリアカウンセリングの資格を取得することにしました。

人材関係の仕事を通じて得られた人脈によって、プライベートにも広がりがあり、人生が華やかになりました。

ただ、エグゼクティブサーチという仕事は景気に左右されやすく、安定した仕事ではなかったため、辞める人も多くいました。でも私は、年齢的にも他に行くところがありませんでしたし、自分も商売をやっていたせいか、波があるのに慣れていたんです。ボスからは「こんなに長く勤めている人はいない」と言われました。

でも、ボスが80代になり、リタイアすることになりました。私は50代になるところで、これは自分でやるしかないと決意し、独立しました。

独立後は、ボスの事業形態を元にしながら、個人で人材紹介業を始めました。また、キャリアカウンセラーの資格を生かし、業務委託でハローワークでの就業相談などにも携わるようになりました。そこで出会ったキャリアカウンセラー仲間から、エスキャリアのことを聞き、業務委託として登録。模擬面接やキャリアカウンセリングの仕事を請け負うことになりました。

ご縁を大切に、人と企業の出会いを生み出していきたい

現在も、これまでの人脈を生かし、個人で人材紹介業を営んでいます。クライアントの要望にピタッとはまる人材を紹介できた瞬間が、私は大好きです。一方で、一度失敗してしまうと仕事が来なくなってしまうので、一つ一つ確実にこなしていくことを意識しています。

前の事務所では、あくまでもボスが中心で、私はサポート役でした。自分で仕事を取ってきて、自分で人を紹介したことによって感じられる達成感は、独立したからこその醍醐味だと感じています。営業活動をするというよりも、一人の人間として築いてきた人脈の中から、お話をいただけています。

エスキャリアでも引き続き、模擬面接やキャリアカウンセリングの仕事を請け負っています。エスキャリアでの仕事を通して、人の考え方や生き方を教えてもらえることは、とても刺激になっています。自分が経験していないことを、疑似体験させていただいているような感覚です。こういう考え方や生き方もあるんだと知ることが、私はとても好きみたいです。

今後も人材紹介とキャリアカウンセリングの仕事を続けていきたいです。私は、仕事人生という言葉が大好きで、様々な方々の仕事人生の大きな節目に、直接関わらせていただくことに、とても働きがいを感じます。キャリアカウンセリングの勉強も続け、現在は熟練レベルの2級の資格ですが、今後は指導者レベルの1級の資格も目指していきたいと思っています。

今後もきっと、人とのつながりの中で、仕事をしていくのだと思います。私の好きな聖書の言葉に、「すべての人に仕える者になりなさい」というのがあります。なかなかその通りに実践するのは難しいですが、人生の途上で出会った人たちとの繋がりこそ、私の人生の宝であり、生きる喜びと感じています。


岩波 はるみ さん
50代後半 / キャリアカウンセラー

大学卒業後、2年間ミネソタに留学。帰国後に、父が営む専門商社に入社し、経理や採用業務に従事。営業職への異動を経て、父の死を期に社長に就任。バブル崩壊で自主廃業を経験。その後、エグゼクティブサーチ会社へ転職し、人材紹介業に従事。その後独立し、人材紹介業を営む傍らで、業務委託でキャリアカウンセラーとして株式会社エスキャリアに参画。

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