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ほんの少しの工夫で上手く行く? 男性上司とのコミュニケーション


先日あるテレビ番組で、妻が夫の言葉でもっともイラッとするのは「言ってくれれば良かったのに」という一言だという話がありました。

「忙しいって言ってくれれば手伝ったのに…」
「体調悪いって言ってくれれば自分でやったのに…」

パートナーからこのようなことを言われ、心の中で「言わなくたって見れば分かるでしょ!」とイラッとした経験、皆さんの中にも少なからずあるのではないでしょうか?

男性は「察する」能力が弱い?

が、この会話、何もパートナーとの間に限ったことではなく、職場でもよく起きています。見るからに手一杯なのに更に新たな仕事を頼んでくる上司にイラッとした、顔色が悪く明らかに具合が悪そうなのにもかかわらずお構いなしに残業をお願いしてきた上司にイラッを通り越してがっかりした、こんな声はよく聞きます。

そしてこういったことは男性上司に多いようで、皆さん口を揃えて「見ればすぐ分かるのに…」とおっしゃいます。

しかし、この「見れば分かる」と言ういわゆる察する能力は女性は得意だけれども男性は苦手と一般的に言われています。

これは昔、男性は狩りをして獲物を捕り生計を立てる、女性は家を守り子どもを育てるという役割分担があった中で、女性は言葉を発しない子どもの泣き声や表情から気持ちを「察する能力」が自然と身についたからと言われています。

ママは子どもの泣いている理由を表情や泣き方から何となく察する事ができても、パパには出来なかったり、ママならいつもとのほんの僅かな違いから子どもが熱を出していることにいち早く気付くのに、パパはずっと一緒にいても気付かなかったりなどそんな話は枚挙にいとまがありませんが、これはまさに察する能力の違いによるものです。

上述の男性上司の「ちょっと見れば分かるのに…」も、まさに察する能力が弱いことによるものです。

男女の会話はいつまでも平行線?

2016年4月に施行された「女性活躍推進法」の影響もあり、ここ数年男性管理職向けの女性社員育成に関する研修が増えていますが、そこで上記の女性社員の生の声をお伝えすると、男性管理職の皆さんは「なら、言ってくれればいいのに」や「言ってくれなきゃ分からないよ」とおっしゃいます。

「言わなくても分かって欲しい」女性と、「言わないから分からない」男性、いつまでも平行線のようにも思えます。

ではこの平行線、どう対応したら良いのでしょうか?

人間は学習する生き物ですから、何度も同じことを経験する事で男性もこの察する能力を後天的に身につける事はできます。女兄弟の中で育ってきた方や、過去女性の多い職場で働いてきた方などは自然と身につけてきた可能性が高く、実際男性でも察する能力の高い方は沢山おられます。

とは言え、もともと不得意なことではあるので、女性と同じくらいに察する能力を身につけて欲しいというのは少々ハードルが高いのも事実です。

であれば、察してくれるのを待つのではなく、むしろ察しないのは男性の特性と割り切り、自ら発信していく事が良いのではないでしょうか。

もし、AとBの仕事で手一杯にもかかわらず新たな仕事を頼まれたなら、(たとえAもBも上司が依頼した仕事だったとしても)「申し訳ないですが、今週はAとBをやらなくてはいけないので新たな仕事をすることが難しいのですが…ただ、Aをどなたかに手伝ってもらえれば出来ると思うのですが…」など、何故忙しいかの事実を具体的に伝えたうえで、ただ断るのではなく可能なオプションを提示するやり方などは客観性と合理性を好む男性には有効だと思われます。

「結果と事実」重視の男性と「プロセスと共感」重視の女性

また、男性は女性に比べプロセスへの関心や共感力も低いと言われています。

「上司は結果ばかり聞く。結果が大事なのは分かるけど、そこまでが大変だったのに」
「目標を達成したらみんなの前で褒められたが全然嬉しくなかった。褒めてくれなくていいから、もっと労って欲しかった」

こんな女性社員の声もよく聞きます。

上司は部下のモチベーションをあげようと良かれと思って結果を褒めたのに、それが裏目に出てしまったケースです。

これは、女性は結果よりもそこに至るまでの道のりを重視する傾向、日々の細かい仕事や結果を出すまでの大変さなどへの共感や労い がモチベーションにつながる傾向があるのに対し、男性はプロセスよりも結果、共感よりも事実を重視する傾向があるという違いから来ています。

もともと、狩りをして獲物を捕り家族を養う事がミッションだった男性にとって、獲物が取れたかどうかの結果が全てで、方法や手段はそれほど重要ではないのです。

では、こんな男性上司にはどう接するのが良いのでしょうか?

もちろん、上司がプロセスへの関心や共感力をつけてくれれば一番良いのですが相手を変える事はできないため、自らのコミュニケーションを変えるしかありません。

結果や客観性を重視する男性の特性を理解し、たとえば何かを報告する際は、共感してほしくてつい伝えたくなるどれだけ大変だったか等の主観的情報はあと回しにして、まずは結果・結論を言うように心がけます。

上司が一番知りたいことをまず簡潔に伝える、その上で経緯を伝え、気持ちも最後にプラスアルファ少し付け加えてみる。

上司にとってはさほど重要でなく、あまり意味のない経緯や気持ちを先に聞かされると、いつになったら欲しい情報が出てくるのかイライラしてしまいますが、話す順番を少し変えるだけで一番知りたかった情報が最初に手に入った上司は、部下の気持ちを聞く余裕が少し出てくるかもしれません。

まとめ

上記はあくまでも傾向です。もちろん、男性でも察する力や共感力に優れた方もいれば、女性でも苦手な方もいます。杓子定規に分けられるものでもありません。しかし、組織は様々な人の集まりであり、色々なコミュニケーションや思考の癖、傾向を持つ者同士の集まりで、男女の考え方の違い、これも一つのダイバーシティです。

自分とは異なる考えや思考にイライラしてストレスを感じたり諦めたりするのではなく、違いを知り受け入れ、歩み寄る事で職場をより快適にしていくことができるのではないでしょうか?

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この記事を書いた人

上杉麻里 さん
キャリアカウンセラー
大学卒業後、不動産会社の人事としてキャリアをスタート。以降、日系・外資系のコンサルティングファームや消費財等、多様な業界に勤務。30代前半に留学によりキャリアを中断、その後派遣や契約社員等を経て、30代半ばで管理職となるなど、様々な働き方や立場を経験。現在は、働く女性を中心としたキャリアカウンセリングや人事制度コンサル、研修等を行う。
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