出産前は恋人同士のような夫婦関係だったのに、出産を機に、そうではなくなったという声は多く聞かれます。子どもが生まれてから夫婦喧嘩が増えた、というご夫婦も多く、深刻になると「産後クライシス」に発展する場合も少なくありません。
出産後に夫婦喧嘩が増える原因は?
出産後に夫婦喧嘩が増える要因として、主に3つ挙げられます。
①夫婦のコミュニケーションが減り、すれ違いが増えるから
子どもが生まれると、全ての時間が子ども中心に回るようになります。夫婦2人の時間は激減し、じっくり向き合う機会も少なくなりますよね。その結果、互いの状況が見えにくくなったり、考えていることがわからなくなったり。パートナーへの恋愛感情が薄れ、夫婦のスキンシップも減ってしまったというご夫婦が多いようです。
②パートナーの家事育児への関わり方に、不満を感じるようになるから
育児には、仕事とは違った大変さがあります。育児をしながらの家事も、普通に家事を行うより、何倍も時間や手間がかかるものです。でもパートナーからは、その大変さが見えにくく、理解してもらえないことが多々あります。
また、ママは24時間365日営業中にも関わらず、パートナーは夜中に赤ちゃんが泣いても「明日仕事だから」と起きてくれなかったり、土日ものんびりしていたり…。
「育休中だから、やって当たり前」といった態度を取られたように感じ、悔しい思いをしている女性が多いようです。
③ご自身の体と心が変化するから
女性の体は妊娠から出産にかけて、大きな変化をとげています。なかでもホルモンバランスの変化は、女性の精神面に大きな影響を与えます。
妊娠から出産にかけて重要な役割を果たすのが、女性ホルモンと呼ばれる「エストロゲン」と「プロゲステロン」です。女性ホルモンは、妊娠中は大量に分泌されていますが、出産後は激減。それによってホルモンバランスが乱れ、産後は精神的に不安定な状態になります。また、女性ホルモンには恋愛感情を高める作用もあるため、激減することでパートナーへの恋愛感情が薄れるのです。
一方で、産後は新たに、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」と母性ホルモンと呼ばれる「プロラクチン」が分泌されます。この2つのホルモンは、赤ちゃんが乳首を吸う刺激によって分泌され、母乳を出す働きを担っています。それだけでなく、母性行動を促し、幸福感を増長させる作用もあります。
こうしたホルモンバランスの変化を考慮すると、産後はパートナーに対する恋愛感情が薄れ、赤ちゃん第一になるのも納得できます。
以上のように、産後は生活環境や、ご自身の心と体が大きく変化する時期です。夫婦喧嘩が増えてしまうのも、仕方のないことかもしれませんね。
夫婦喧嘩を曖昧なまま終わらせないために
大切なのは、夫婦喧嘩をまったくしないことではなく、そこから生産的な話し合いに向けていくことです。夫婦喧嘩をしている最中は当然嫌な気持ちになりますが、喧嘩をきっかけに互いの違いに気づくことで、よりよい方向へ向かっていくことができます。
ではどうしたら、よりよい方向に向かっていくことができるのでしょうか?
それは、怒りの裏にある感情や根本的な問題に目を向け、相手の前向きな行動を促すためには、どう伝えたらいいのか考えることです。
夫婦喧嘩をしている最中は、互いに「怒り」の感情が心の中を支配しています。「怒り」を感じると、ついそのまま相手にぶつけたくなるものですが、感情のままに怒りをぶつけると、相手は「攻撃された」と感じ、反撃に出たり、自分を正当化したり、逃げたりと、自己防衛反応を起こします。そうなると、生産的な話し合いをすることはできません。
「怒り」を感じると脳内で生成される「ノルアドレナリン」を抑えるためには、心身をリラックスさせるホルモン「セロトニン」を分泌させる必要があります。
セロトニンを分泌するためには「呼吸を整えること」「運動をすること」などが効果的。そのため、もしパートナーに対して怒りを感じたら、まずは一呼吸置いて散歩をしてみる、などをしてから話し合ったほうが、前向きに課題を解決していくことができます。
また、気持ちの伝え方も重要です。
実は、「怒り」の裏には「不安」「悔しさ」「寂しさ」といった感情が隠れていることがあります。そうした裏にある感情を理解せずに伝え方を間違うと、パートナーに本当の気持ちが伝わりません。
例えば、ママが育児と家事で休む暇もないのに対し、パートナーが手伝ってくれず、怒りを感じている場合。その裏には一人で育児や家事を行うことに対する不安が隠れています。
子どもに向きあうママは、いつも試行錯誤を繰り返しながら育児をしています。「この対応でよかったのかな」と不安に思うことも多々あるでしょう。そんなとき、パートナーの支えがあれば心強いのですが、支える姿勢が見られないと、ついイライラしてしまいますよね。
「手伝ってよ!」とパートナーを責めたくなる気持ちも、すごくよくわかります。でも、そう言いたい気持ちをグッとこらえて「慣れない育児で不安を感じているから、助けてほしい」という言い方にしたほうが、気持ちが伝わります。
今後、パートナーに対して怒りを感じたら、その裏にある感情が何なのかを考えてみてください。そして、相手に伝わる言葉を選ぶよう意識してみるといいでしょう。
夫婦円満の秘訣は?
喧嘩をしても、仲のいい夫婦でいるためには、意識的にパートナーと会話をする時間を設けることが大切です。
シカゴ大学教授の山口一男先生が発表された「夫婦関係満足度とワーク・ライフ・バランス:少子化対策の欠かせない視点」では、夫婦関係満足度に「会話時間」が大きく影響を及ぼすことが明らかにされています。
論文内では、夫婦関係満足度を高める要因として
・夫婦の会話時間が長い
・夫婦で共有する時間が長い
・夫の育児参加が積極的
・夫の収入が高い
・世帯の貯金が多い
といった要因が明らかにされていますが、最も影響が高かったのが「夫婦の会話時間」だったといいます。
また、山口教授は「夫の月収が10万円減った場合、同じ夫婦関係満足度を保つためにはどうしたらいいのか?」という点についても検証されていますが、その結果「平日の夫婦の会話時間が1日あたり16分増加する」ことが、10万円分を補うことが明らかになったそうです。
月収が10万円も減ってしまうなんて、家計にとっては大きなダメージです。それが平日1日あたり16分の会話が増えることで補われてしまうなんて、すごいことだと思いませんか?
夫婦円満のために、少しでも会話時間が増やせるよう意識したいですね。
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