林田香織さん(NPO法人Fathering Japan)×エスキャリア対談「育休中こそ”チームわが家”を!」【後編】


「チームわが家」を推進されているNPO法人ファザーリング・ジャパンの林田香織さんをお招きし、株式会社エスキャリアの岡本真梨子と、株式会社エスキャリア・ライフエージェンシーの城梨沙で行った対談。今回は後編をお届けします!

■前編はこちらから→林田香織さん(NPO法人Fathering Japan)×エスキャリア対談「育休中こそ”チームわが家”を!」【前編】

変わりたいのに、なぜ変われないんだろう?

岡本:こんなにも大変で、変わる必要性をみんなが感じているのに、変われないのって何でなんでしょうね?

林田:変わる余力がないのが大きな理由かと。変わるって、エネルギーいるじゃないですか。子どものことで手一杯、仕事もモヤモヤしている状態で、環境に支配されてしまって、自分から環境を変えることへのモチベーションが上がらない。何から変えていけばいいかわからなかったりね。思い込みも大きいと思います。

城:私は今は会社員じゃないですけど、会社員で復職するなら時短勤務、みたいな思い込みがあったなぁと思います。周りもみんなそうだったし、時短じゃないと両立できないと思ってた。でも、定時の17時半で退勤できれば、延長保育で18時半まで保育園に預けられれば、フルタイムでも実はできちゃうんですよね、本当は。そしたら、お給料だって下がらないし。

林田:フルタイムに戻したら、残業をしなきゃいけないっていう恐怖が邪魔したり。本当は免除申請もできるけれど、慣例的にしなくちゃいけないというか。時短だったら遠慮なく残業断れるけど、フルタイムだったら残業しなきゃいけない、みたいな。

一方で、時短にすると家事・育児負担がママに偏るでしょう。時短勤務のせいで、家事・育児を一手に引き受けて苦しくなっているなら、フルタイムに戻して、家事・育児も二人で分担した方がいいんじゃない?って言うと、「確かに!」っていう人多いんです。

岡本:暗黙の了解というか、フルタイムの人は残業するでしょ、という圧力はまだありますよね。

林田:そう。だからFJのイクボス研修では、「誰かだけのワークライフバランスではなく、全ての人のワークライフバランスでないとダメ」って伝えてます。
(参考:Fathering Japanイクボスプロジェクト

城:みんなが残業せずに定時に帰れたら、そもそも議論の必要ないですもんね。

林田:今は、定時退社した後、カフェに行って仕事をしていることが問題になったりしてるけど、それは業務量を減らさずに、残業しないことだけが先行してしまっているから、起きているんだよね。本当は、業務量を減らしてからじゃないと、残業禁止を始めちゃいけなかったんだけど。どこもみんなアップアップだよね。特に中間管理職がすごく大変になっている。

岡本:かえって、働き方改革やダイバーシティの担当者が憎まれちゃってますよね。「こんなことさせて」みたいな。残業ありきの働き方から、急に残業しないででも同じだけの成果を出せ、となって、残業代は出ないわ会社にはいられないわ、でも仕事は終わらないわ・・・と。

林田:みんなで定時に帰って、やりたい人は自主的にやればいい、と私は思うわけです。仕事を思いっきり頑張りたい人だっているじゃない?日本は裁量労働制のところが少ないけれど、アメリカでは、成果物に対する評価だから、クオリティ高い仕事をすればお給料上がる仕組みになってる。

シアトルのマイクロソフトでいろいろ話を聞いた時に、「勤怠をつける意味って何ですか?在宅勤務でログつけるって、そっちの方が労力じゃないですか?」ってすごい聞かれたんですよね。

城:時間管理しないと成果管理ができない、ってことなんですよね、まだ日本では。

どうありたいか、夫婦で会話しよう

林田:働きすぎで時間がないと、心にも余裕がなくなるから、夫婦のコミュニケーションが減ってギクシャクする、ってことになっちゃう。

城:疲れると、会話にもならないですもんね。業務連絡のみ。

岡本:LINEも、“了解”のみ(笑)

城:もっと疲れてる時は、スタンプだけ(笑)

岡本:「夫のLINEがあっさりしすぎ!」ってこぼしてたもんね(笑)

林田:実は両立支援の研修の場で、夫婦がお互いの本音に初めて気づくことも多いんです。

妻が研修の中で「フルタイムで働く」という理想像を描いていて、夫が「ママ、働きたかったの?無理のない範囲でやりたいのかと思ってた」と驚いていたり、時短勤務で家事・育児負担が自分に寄って苦しんでいる妻の声を聞いた夫が「週に何回か、あと1時間早く帰れと言われたら、できなくはないかなぁ。仕事前倒しでやった方がいいと思って、念のために残っているだけの時もあるから」と言って、「え!そうなの?!」と妻が驚いていたり。

岡本:口に出さないと伝わらないことって、ありますよね。

林田:お2人のご家庭は、その辺うまくいってるイメージ。どうやってるの?

城:都度都度、コミュニケーションを取るように心がけていますね。私が夜遅くなる日は、夫が子どもを見てくれているので、負担かけたなと思ったら、今度はそちらが夜遅くなっていいよとか、仕事時間取っていいよと伝えたり。

岡本:私の夫は、もともとマインドが家庭人。1年前に独立して、今はフリーランスとして自宅で仕事をしながら、家事をメインで担当しています。それまではIT企業勤務で、長時間労働や泊まり勤務は当たり前、夜中に子どもの寝顔を見に帰る生活でした。彼自身とても疲弊していましたし、見ている私も辛かった。

去年まではずっと、私が時短的な働き方だったので、育児・家事は私メインだったんです。夫の独立を機に役割をガラッと変え、私がフルタイムで夫が在宅勤務の今は、夫がメインに。でも、今はこのスタイルだけど、また子どもの成長や仕事の変化によって変わると思います。お互い節目節目で話し合おうね、と決めています。その都度微調整しながら、ですね。

林田:そう。夫婦の役割もライフステージによって変わるものなんだけど、いったん分担したら、その負担はそのまんま、と思い込んでいる人が多い。状況的に、5:5にすることが難しい時ってあるでしょ?5:5にすることが逆にストレスになってしまうというか。

城:そうそう。私はそうでした。「役割も半々、家に入れるお金も半々ね」と夫に言われて。でも、だんだん苦しくなってきてしまって。夫も苦しく思っていることがわかって、話し合いました。でも、話し合う場を作ることって、パワーがいるんですよね。

岡本:向き合うことって大変だよね。でも、状況は変わりうるものだから、それにアジャストしていくには、とにかく当事者同士で相談しないとできない。それを意外と当然だと思っていない人が、世の中には多いなぁと感じますね。

林田:「最近大変だから、話し合おう」って言うの?

岡本:「最近どう?」みたいな感じですね。「こういうのが大変」っていうのが出てきたら、「どうしたらいいかね~?」って相談したり。

2人目が産まれる前に、タスク表を作って、お互いの負荷を可視化したんです。そうしたら、家事育児のタスク自体は私6:夫4くらいだったんですけど、精神的に負荷が高く、代わりのきかないタスクが私に寄っていることがわかって。「じゃあ、これをこっちにしよう」とか、「家電買いかえよう」とか、一緒に見ながら調整しましたね。

林田:公平感には、”量的公平感”と、”情緒的公平感”があります。重要なのは、情緒的公平感。気持ち面で公平だとお互いが感じられるだけで、ずいぶん違いますよね。

もっと周りを頼っていい!

城:みんなが何に疲弊しているかっていうと、家事なんですよね。保育園から帰ってきて、やっと子どもと一緒の時間を過ごせるっていうのに、その時間帯に手を取られるものって、家事でしょ。ご飯を作る、片付ける、お風呂を沸かして入れる、明日の準備をする、洗濯をする、など休む間もない。

林田:そう。日本人はね、やりすぎですよ。本当にちゃんとしてるもの。アメリカに住んでいた時に、みんな全然ちゃんとしてないし、洗濯ものを干す文化もないし、そもそも毎日はやらないし、ラクだったなぁ(笑)

岡本:今、パートナーの仕事に帯同してアメリカに移住した弊社のメンバーが、サイトでコラムを書いているんです。アメリカで3人の子育てをする彼女に、海外のワーキングママ事情を発信してもらいたくて。最近は、アメリカのママはポジティブな理由でディナーを作らない日がある。作らないことで、どんなメリットを得ているか?という観点で、執筆してもらいました。
(参考:「育休のうちに真似したい!外国人ママの楽々ディナー」)

林田:素晴らしい!

岡本:自分の「ねばならない」に対して、「あれ、それは何でだっけ?」と問うてみてもいいですよね。私は週1回外食しようが、ピザを取ろうが、それで時間と気持ちにゆとりが出来て家族みんなが笑顔ならいい!って今は思っています。

林田:そうそう私も、職場復帰後は、食事は紙皿で!って言ってたよ。エコではないけど、片付けの手間が省けるもの。時間をかけて作った、素敵な小鉢によそった手料理を、イライラしながら食べるのと、レジャーシート敷いて紙皿で出来合いのものをワイワイ食べるのと、どっちがいい?って話ですよね。

もちろん、自分の手で、おいしい栄養価の高いものを作れば、食育や栄養面での成果は上がる。自分として、「食事作りにこだわる」と決めて選んでいるなら、全然問題ない。ただ、「こうしなきゃいけない」と思い込んでいたり、他の選択肢を知らなかったりすることが、問題なんだよね。

岡本:私も実は家事が好きで、料理にもこだわる方なので、一から出汁をひいたりするんですけど、一生懸命作っても、子どもは食べてくれないことってあるじゃないですか。

ある日、疲れ果てて帰ってなんとか作った食事を残されて、心が折れそうになって、離乳食期の子どもに「一生懸命作ったのに!」と言いそうになって。「いや、それは違う。私がやりたいから勝手にやっていることで、自己満足だ。子どもにキレるのはおかしい」と自分を諫めたことがあります。相手は自分とは違う人間なんだから、食べてくれる日もあるし、食べてくれない日もある。どう転んでも、自分でこう決めたんだからいい!と思えることが大事なんだなって気づきました。

林田:今は、頼れるサービスもいっぱいありますよね。外食も中食も充実しているし、20分で1食作れるキットなんていうのも売ってるし。

城:弊社が運営するエスキッチンは、平日の食事作りを楽にする3~4日分の作り置きや、離乳食対応もしています。私は、月2回平日に利用していますが、利用後2~3日は、本当に帰宅後の精神的負担が全く変わりますね。

栄養士資格を持っている方がメニュー開発から調理まで行うので、自分で作るより栄養バランスもいいし、子どもや赤ちゃん向けに取り分けもできるし、お弁当に入れたり、作り置きを別の料理にアレンジしたりなど、活用次第で何倍もお得に利用しています。

岡本:掃除や片付けを外注できるサービスも増えていますよね。私も年末や季節の変わり目など、ここは大変!という時に利用しています。

城:保育サービスもいろいろありますよね。保育園はもちろん、ファミリーサポートやベビーシッター、病児保育などのサービスも増えているし。私は、ファミリーサポート派。バックに行政がついている分、教育がちゃんとされていたり、料金が安かったりするのが魅力。何より、ご近所の方が来てくれるのが助かります。オペレーションは電話のみとアナログですが。夫は、お気に入りのベビーシッターサービスがあって、よく使っています。

岡本:外注すると、もちろんお金はかかる。家庭によっても出せる金額は違います。これは、ただ単に家事負担を楽にする代行費として考えるのではなく、自分たちの未来への投資を、いくらまでなら出せるか?という観点だと思ってます。キャリアを中断せずに、でも無理しすぎずに家庭も仕事も続けることで、5年後・10年後に繋がったり、ありたい自分や家族の姿に近づいたりできると信じて!

城:そうそう。うちは、夫と二人で「今は投資の時期。貯金は諦めよう!」って話しています。お互い仕事も大事だと合意して、外部リソースにお金を使うと割り切りました。

林田:それが夫婦で合意形成できているって、すごい!

お金がかからないという意味では、実家も大きいですよね。近いとか、力を借りられる状況にある、といった場合は、やはり心強い味方。加えて、ママ友、パパ友のコミュニティも強い。同じ保育園の親同士、というのもあるけれど、それとは別に情報交換を目的としたコミュニティを運営しているところも多いの。同じような問題意識を抱えていて、背景なども似ていることから、遠慮なく頼り合えるみたい。「今日ちょっと遅くなりそうだから、うちの子も一緒に連れて帰ってもらえる?」「いいよ、晩御飯も食べさせておくよ!」「助かる!」みたいなコミュニケーションが取れると、すごく気が楽になりますよね。

~「チームわが家」の概念~

岡本:本当にそうですね。私も園や小学校のママ友とLINEグループで助け合ったり、近所の友人一家を手伝いに行ったり、助けてもらったりしています。

「人に迷惑をかけてはいけない」という思い込み、呪いみたいなものって、日本人、特に子育て世代は持っている。社会的な風当たりの強さもありますしね。私も以前は強く持っていて、苦しかったです。

でも、そもそも人は、誰にも迷惑をかけずに生きていくことなんてできない。人との関わりの中で、持ちつ持たれつ、お互い様の精神で、みんなで子育てしていけばいいと思います。もっと気軽に周りを頼っていい。助けてもらったら、恩送りを次の人にしていけばいいんです。それは単に親を物理的に楽にするだけではなく、親が笑顔になることで、結局は子どもが幸せになることに通じてるんですよね。

自分自身がどうありたいのか、夫婦・家族関係はどうありたいのか。今どうしたいのか、数年後にどうしたいのか。ちょっと勇気と力を出して、パートナーと話してみることで、少し何かが変わって、みんなが自分たちにとって快適な環境作りをしていけるといいいですね。

じゃあ、今回はもうそろそろ・・・

林田:え、もう時間?!

三人:全然話し足りなーい!!

城:今度、飲みながら続きやりましょう(笑)

岡本:それいいですね!

林田:楽しみにしてます!

株式会社エスキャリアと株式会社エスキャリア・ライフエージェンシーは、「チームわが家」の理念に賛同しています。家族みんなが笑顔で過ごし、女性が仕事も家庭も諦めることなく、子どもがのびのびと育ち、誰もが自分らしく歩んでいく。そんな社会の実現に向けて、キャリア支援・ライフ支援を行っています。

大変盛り上がった今回の対談企画。ご協力いただいた林田さん、本当にありがとうございました!

 


林田香織さん
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事
ロジカル・ペアレンティングLLP代表
日米の教育機関において、長年にわたり日本語教育に従事。8年の在米期間を経て、2008年帰国、2009年独立。自治体、企業において、両立支援セミナー、育休前・復帰前セミナー、イクボスセミナー等の講師を多数務める。受講者が自分自身や他の受講者とのコミュニケーションを通して現状を把握し、自身に落とし込み、変化を経験し、家庭のコンフリクトを改善することで、職場におけるモチベーションの向上を計っている。プライベートでは、九州男児の妻、三人の男児の母。日経DUALにて、「リンダ先生の、Team わが家」で行こう!」連載中。

岡本真梨子
株式会社エスキャリア取締役社長
大学院修了後、株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の人事部へ。結婚を機に文科省所管の教育研究機関へ転職し、心理カウンセリングや研究開発、セミナー事業等に従事する。 出産後、時短勤務を経験する中で、女性が柔軟に能力発揮できる機会や文化の重要性を感じ、2013年に株式会社エスキャリアへ参画。企業・教育機関向けのHR支援事業の推進と、女性向けキャリア有料カウンセリングサービス「マイ・カウンセラー」の立ち上げ等に尽力。経営企画・事業戦略等を担いつつ、自身もカウンセラー・講師として活動中。一男一女の母。

城梨沙
株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー代表取締役
大学卒業後、株式会社パソナキャリア(現パソナ)に入社。法人営業として、求人開拓営業を経験。3年半で500社以上の企業の採用に関わり、求職者とのマッチング業務を行う。その後キャリアカウンセラー・講師として独立し、株式会社エスキャリア設立時に執行役員に就任。2016年に、ライフ支援事業を行う株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー設立。料理を通して子どもの自信を共に育む「エスキッチン」サービスを展開中。一男一女の母。


この記事を書いた人

天田有美 さん
大手人材会社において、法人営業、人事教育、プロモーションを経験。現在はフリーランスとして、キャリアカウンセラー、ライター、チアダンスインストラクターとして活動中。2歳の娘を抱えるワーキングママ。