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林田香織さん(NPO法人Fathering Japan)×エスキャリア対談「育休中こそ”チームわが家”を!」【前編】


「Team wagaya(チームわが家)」という言葉を聞いたことはありますか?今年の流行語大賞にもノミネートされてしまった”ワンオペ育児”という言葉とは逆に、”みんなで子育てしよう!使えるリソースは上手に活用して、楽に仕事と家事・育児を両立しよう!”という考え方です。

今回は、「チームわが家」を提唱されている、NPO法人ファザーリング・ジャパンの林田香織さんをお招きし、株式会社エスキャリアの岡本真梨子と、株式会社エスキャリア・ライフエージェンシーの城梨沙が、お話を伺いました。

取材月:2017年11月

岡本真梨子(以下、敬称略)林田さんが提唱されている「チームわが家」にとっても共感しています。今日お会いできるのを楽しみにしていました!

林田香織さん(以下、敬称略)うれしい!ありがとうございます。
改めて説明すると、「チームわが家」とは、夫婦のどちらか1人だけ、または夫婦二人だけで子育てするのではなく、民間サービスや行政サービス、家電、テクノロジー、じいじ&ばあば、地域のパパ友&ママ友など、家族が持っているリソースと連携した子育てのことなんです。

城梨沙(以下、敬称略)私もめちゃめちゃ共感しています!実は私、今産後2か月なんですけど、今日絶対にお会いしたくて、ファミリーサポートの方に生後2か月の子どもを預けてきました。

林田:え!産後2か月?!体大丈夫?

城:はい!もう、じっとしてる方が耐えられなくて。

岡本:梨沙ちゃんは、”止まると死んじゃう病”だから(笑)

城:そうそう(笑)。でも、こうして周りの方の力を借りるって、全然悪いことじゃない。むしろ、良いこと!
(城のキャリアインタビューはこちらから)

抱え込みすぎてしまう日本のワーキングママたち

岡本:私、1人目の育休当時は、遠方の親にも頼れず、でも経済的な余裕もなくて、夫婦2人だけでなんとかしなきゃって思ってました。

育休中、脱水状態になることが何度もあって。疲れや緊張、落ち着いて飲食ができないことなど、色々重なってたんだと思います。毎回、脂汗滴らせて震えながら意識が遠のいていく中、子どもの泣き声を聞きながら、「どうしよう・・・この子どうしよう・・・今夫に電話しても、帰ってくるまでに時間かかるし・・・実家は無理だし・・・」と恐怖してたの、すごく覚えてます。
(岡本のキャリアインタビューはこちらから)

城:壮絶~!でもわかります。私も、今はファミリーサポートとかベビーシッターさんに頼る日も多くあるけれど、お願いする決心がつくまでに実は2年半くらいかかりました。人に任せるのが怖くて。

岡本:わかる!なかなか踏み切れない。でも、自分と子どもだけでも、リスクがあって怖いんですよね。
2人目の産後は、当時私はフリーランスで育休も無かったので、2か月で仕事復帰したんですね。子どもとなるべく一緒にいたくて、在宅勤務や子連れ勤務をしていたんですが、カウンセリングなどどうしても子連れではできない仕事もあって。 一時保育の枠は全くない。でも仕事の穴を開けられない。

どうにもならなくて、追い込まれてやっとベビーシッターやファミリーサポートにお願いしたら、すごくいい人で安心だった。変に抱え込んで頑なになっていないで、もっと早くお願いすればよかった!って思いました。

城:そうそう。1人目の時って、何が大変なのかもよくわからない。どんなリスクがあるかも予想できないから、手が打てないし、なのにやらなきゃと思うから抱え込むんですよね。産む前なんて、おしゃれなルームウェア着て、赤ちゃんにかわいいベビー服着せて抱っこしてる、と思ってたもん!

実際は、自分も子どもも、清潔な服着てりゃとりあえずよし(笑)。いかに自分がごはんを食べる時間、寝る時間をちゃんと捻出するか、ですよね。眠れないことのキツさなんて、産前にはわからなかったなぁ。

岡本:私、前職で幼児教育に携わってたから、子どもの発達段階も理解しているし、どんな時にどんなことがあるか、知識や仕事経験としてはあったんです。でも、知ってても、辛かったー!当事者にならないと、大変さがなかなかわからないものだよね。「こんなに大変だとは!」と思ったものです。ましてや自分だけで抱え込んでいたらなおさら。

城:今回は2人目の出産だったから、どう労力カットするか?しかもはや考えてないです(笑)。家電も買い替えたし、ファミリーサポートさんももう一人増やしたくて、絶賛面接中。何だったんだろう、あの1人目の時の“全部私がやらなきゃ”感

岡本:エスキャリアのカウンセリングにいらっしゃるワーキングママたちも、そう思っている方がすごく多いです。「私が全部やらなきゃ」って抱え込まれて追い込まれてるんですよね。
(参考記事:エスキャリアに実際寄せられたご相談

城:育休中に、時間があるからってママに家事負担が寄ってること、よくありますよね。でも、パートナーと話し合わずにそのまま復職しちゃうと、地獄。何もかも、ママが背負いこむことになっちゃう。

林田:私は、講演とか研修とかで全国をまわるんですが、「子育ての中で、どういうところが大変?」って聞くと、泣いちゃう人多いんです。大変って言っちゃいけない、って思ってる。自分の時間を犠牲にしようと、何もかも子育てに捧げようと、母親なんだから当然でしょ、と、本人も周りも思ってる。おかしいですよね。そんなはずないのに。

岡本:そうなんですよね!おかしいってことにすら、気づいてない人が多い。実は基本的な人権みたいなところも踏みにじられているけど、気づかない。「そもそも、そういうもの」とか、「パートナーに交渉してもムダ」だと思い込んでいる。

なぜ、ママたちは抱え込みすぎてしまうのか?

林田:家族社会学では、“夫婦間勢力”という言葉があります。かつては、父権主義のように夫に圧倒的な力があるパワーバランスだった。今は、妻がもやもやしてても、言えなかったり、そういうものだと思い込んでいたり。そもそも不公平だと気付いてないから、問題が顕在化しない、とかってことが起きている。会社では自己主張できるのに、家庭では全く非主張的、という女性も、まだまだ多いし。

岡本:あとは、親の影響も強いですよね。私は子どもの頃に親が離婚しているんですが、私の母は、仕事も家事も子育ても、何もかも一人でやって。ものすごく自立した女性で、誰の助けも借りなかった。なので、私がたまに両立のしんどさをグチっても、「私は全部自分でやった。あなたも全部自分で何とかしなさい」って言われるだけでした。

林田:親の価値観とか、育った環境とかって影響が大きいですよね。夫婦間の家計貢献度の格差、時間的余裕の差や、「母としてどうありたいか?」というアイデンティティなども大きな要因の一つ。複雑に絡み合っているんですよね。

城:そもそも、他人に頼るって発想がなかったりしますよね。家事や子育てにまつわるタスクを夫婦で分担しても、苦手なことや納得感が低いことってイヤイヤやるから、クオリティが低い。それに対して一方が文句を言うと、「やってるだけいいだろ!」って結局ケンカになっちゃう。だったら、プロに依頼した方が、よほど質もいいしストレスも少ない。

林田:何事も、望んでやっているならいいんだけど。他に選択肢があるとは知らないことで、なんとなくモヤモヤしているけど、そのままにしていることが、問題だなあと。

「チームわが家」が実現できると、いいことがたくさんある

岡本:「チームわが家」が実現できると、こういった問題が一気に解決しますよね。仕事と家庭の両立が、ムリしすぎなくてもできるようになる。

城:しかも、それが何より子どもにとってもいいんだよね。

林田:そう!そうなんです!!それを言いたい!

~「チームわが家」の概念~


城:
ダイバーシティの進む世の中で、親以外の大人とも接して、いろんな価値観を身に着けるってすごく重要なこと。子どもにとってもダイバーシティな環境を整えてあげられますよね。

林田:「チームわが家」を進めると、子どももチームの一員ですから、子どもが家庭の中で役割を持つようになるんですね。そして自分で考え、責任を持ってその役割を担おうとする。

例えば、「洗濯物を干す」ことをお願いしたら、どういう干し方をしたらよく乾くか、どう干したら全部干せるか、色々なことを考える。もし干し方が悪くて乾かなかったら次はどうしたら乾くか考える。この過程が考える力や自分でやろうとする意欲、そして、できたときの自信を育むいい機会になるんです。

城:それがまさに、エスキッチンのサービスそのものです。子どもが家庭内で役割を持って、例えば何か料理を作れるようになれば、子どもだけでなく親も嬉しいし、子どもが生きてくための力や自信に繋がる。
(エスキッチン活用事例:【ご利用家庭紹介vol.13】夏の自由研究が出来ました)

岡本:そうですよね。親だけで家事育児を抱え込んでいると、気持ちも時間も余裕がないから、手伝いをさせたりなどの機会はなかなか作れなかったりしますもんね。

そして外部のリソースを使うには、何のために、誰に、いつ、何をお願いするかを明確にして、夫婦間でも伝えあわないといけない。なので、マネジメント能力も鍛えられますよね。

林田:そうなの。浜屋祐子さんの研究では、チーム育児がリーダーシップ向上に繋がり、職場でのパフォーマンスも上がるという結果が出ているんです。

チーム育児をすると、子どもの気持ち、夫婦のスケジュール、預け先の制約条件など、全体を見渡して物事を考えるようになる。思い切って他人に頼るという経験をすることで、人を信頼して任せることの訓練にもなる。自分以外の人に子どもの状況を共有したりもするから、チーム間情報共有という点でもプラスになりそうですよね。

岡本:ちなみに林田さんが普段実施されている研修は、どういうものなんでしょうか?

林田:まずは、棚卸シートを使って現状を分析してもらいます。家庭内の誰がどのタスクをやっているか、アウトソースしているか、分量は誰がどのくらい多いか、などを可視化していく。
そして、5年後のありたい姿を描いてみる。それぞれ夫婦別々に書いて、見せ合いっこしてもらいます。そのあと、グループで共有する。そうすると、「あそこのご家庭では、ファミリーサポート活用してるんだ」とか、「あのやり方いいね」とか、学びあえるんです。
そして最後、決心と行動指針に落とし込み、いつからやるか?も書いてもらう。

城:素晴らしいです。他人の家の両立方法を知るってとても大事!それで自分の家庭で取り入れられそうなものをやってみる。

林田:決心、行動指針は、小さいことでも良くて。「1週間以内にロボット掃除機を買う」とかで全然OK。「あ、私たち変われる」って気づいたら、あとは自分たちでできるから。気づくまでのところをサポートしている感じですね。

岡本:その研修は、夫婦で受けることが多いんですか?

林田:最近は、以前に比べて夫婦で受ける人がが本当に多くなりましたね。
やり始めた頃は、企業側も「なんで会社がそこまでしなくちゃいけないんですか?」だったし、研修を受ける側も「夫は連れて来られません」といった反応が多かったの。今もそうした状況は一定数あるけれど、マインドは随分変わってきていると思う。

夫も、「妻の会社を見てみたい」という気持ちがあったり、自己研鑽に興味があったりして、受講生全体の7~8割くらいは夫婦で参加してくださる。平日の日中に仕事を休んで研修来てくれたり、夕方に子どもを預けて実施したり。企業側も、両立支援研修として「これは業務命令だから」くらいの強さで従業員に伝えているところも増えています。パートナーが研修に参加するに当たって、交通費を出したりね。

城:交通費を出してくれるんですか?!そこまでしてくれるなんて、すごいなぁ。

林田:私は、夫婦で受けてほしい。片方が聞いてきて、家帰ってから内容を聞かされたって、よくわからないし、時に逆効果でしょ。同じテーブルに座って、一緒に見て、同じテンションで経験してもらわないと、なかなか難しいんですよね。

エスキャリアでは、どんな取り組みをしているんですか??

岡本:エスキャリアでは、有料のキャリアカウンセリングを提供しています。

世の中、無料のキャリア相談を実施している場所はたくさんありますが、最終的にその方がご入社された企業からお金をいただくので、無料相談が成立しているんですね。ではそのご支援は、純粋にその人のためだけのものか?というと、そうではない場合もあるし、転職以外のことで悩んでいる方も圧倒的に多い。

そのため、相談者から相談料をいただくことで、相談内容にかかわらず“100%その人のためだけ”のカウンセリングを行っています。国家資格キャリアコンサルタントの中から厳選してカウンセラーを集めていますので、相談の質の高さにもこだわっています。

キャリアって、多くの人が勘違いしているけれど、そもそも仕事のことだけを指す言葉ではないんです。家庭、地域、学び、余暇、自分自身のパーソナリティなど、様々な要素を全て含んで”キャリア”なんです。だから、そうしたお話をカウンセラーは全部まるっと聞きます。そして最後は、必ず具体的なネクストアクションまで決めてから終了します。

相談にみえる方は、「このままじゃ私、行き詰まる…」っていう危機感の強い30代のワーキングママたちが多いですね。二人目が欲しいとか、昇進を打診されているとか、育休中で自分のキャリアについて悩んでいるとか、夫の転勤についていくかいかないかとか、そうした場面に直面している人も多いです。中でも育休中の方に対しては、復帰後に「こんなはずじゃなかった…」となる人を減らしたいという思いで、取り組んでいます。

皆さん、色々なことを抱え込み、悩みに囚われていることが多いです。そこを第三者のプロに問いかけられることで、固定観念から解放され、前に進まれる方がとても多いですね。

林田:いいねー!素敵な取り組み。

岡本:自分1人で抱え込まないでほしいなぁと思いますね。誰かに話すことで、突破口が見えることもあるし。

林田:どこか一点でも穴が開けば、変わっていくよね。

岡本:私たちも林田さんも、固定観念をいろんなアプローチで崩そうとしているってことですね。背負っているいろんなものをいったん下ろして、「自分はどうしたいんだっけ?」と考えてみることが必要ですね。

・・・まだまだ白熱する対談は、後編に続きます!


林田香織さん
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事
ロジカル・ペアレンティングLLP代表
日米の教育機関において、長年にわたり日本語教育に従事。8年の在米期間を経て、2008年帰国、2009年独立。自治体、企業において、両立支援セミナー、育休前・復帰前セミナー、イクボスセミナー等の講師を多数務める。受講者が自分自身や他の受講者とのコミュニケーションを通して現状を把握し、自身に落とし込み、変化を経験し、家庭のコンフリクトを改善することで、職場におけるモチベーションの向上を計っている。プライベートでは、九州男児の妻、三人の男児の母。日経DUALにて、「リンダ先生の、Team わが家」で行こう!」連載中。

岡本真梨子
株式会社エスキャリア取締役社長
大学院修了後、株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)の人事部へ。結婚を機に文科省所管の教育研究機関へ転職し、心理カウンセリングや研究開発、セミナー事業等に従事する。 出産後、時短勤務を経験する中で、女性が柔軟に能力発揮できる機会や文化の重要性を感じ、2013年に株式会社エスキャリアへ参画。企業・教育機関向けのHR支援事業の推進と、女性向けキャリア有料カウンセリングサービス「マイ・カウンセラー」の立ち上げ等に尽力。経営企画・事業戦略等を担いつつ、自身もカウンセラー・講師として活動中。一男一女の母。

城梨沙
株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー代表取締役
大学卒業後、株式会社パソナキャリア(現パソナ)に入社。法人営業として、求人開拓営業を経験。3年半で500社以上の企業の採用に関わり、求職者とのマッチング業務を行う。その後キャリアカウンセラー・講師として独立し、株式会社エスキャリア設立時に執行役員に就任。2016年に、ライフ支援事業を行う株式会社エスキャリア・ライフエージェンシー設立。料理を通して子どもの自信を共に育む「エスキッチン」サービスを展開中。一男一女の母。


この記事を書いた人

天田有美 さん
大手人材会社において、法人営業、人事教育、プロモーションを経験。現在はフリーランスとして、キャリアカウンセラー、ライター、チアダンスインストラクターとして活動中。2歳の娘を抱えるワーキングママ。
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