「出産後は、早めに職場復帰したい!」と考えていても、いざ出産してみると、仕事と育児のバランスを考え直す人は多いものです。転職という手段が頭をよぎる方もいらっしゃるのではと思います。
でも、ママの転職には、入念な準備とタイミングの見極めが重要です。なかには、そもそも転職しない方がいい場合もあります。
育休中に転職を考える人が多いのはなぜ?
そのひとつに、出産前と後では、価値観が変わるから、ということが挙げられます。出産してみてわかるのは、想像以上に自分の子どもは可愛い、ということです。
「この子ともっと一緒にいたい! 」「一緒の時間を大切にしたい」という思いが強まるからこそ、「もっと近めの職場の方がいいのかな」「今の仕事は、子どもとの時間を減らしてまで働く価値のある仕事なのかな」と、転職が頭をちらつくようになるのです。
それに、育児は想像以上に大変です。職場復帰をしたあとの両立の姿が思い描けない場合、「もっと仕事と家事育児を両立しやすい職場に転職したほうがいいのでは」と不安を感じられるのも当然です。
また、育児をしながらしっかり働くつもりでいても、必ずしも希望通りになるとは限りません。「マミートラック」と呼ばれるように、ワーキングママであるという理由で、業務内容が補助的なものに変わる可能性があったり、昇進・昇格とは程遠くなってしまったり。そんな先輩ママの姿を職場でみていたら、ちゃんと実力で評価してくれる会社に、転職したいという気持ちになることもあるでしょう。
ただ、そもそも育児休業は、職場に復帰することを前提とした、ママパパを応援するための制度です。
育休中に転職活動をして、そのまま復帰をせず退職することは、確かに法律的には問題ではありません。(参考記事:「育休後-復職せずに転職は可能か?」)
しかし、あなたの育児休業中に、会社では、あなたの業務を誰かが補うなどの負担がかかっているかもしれませんし、戻ってくるという会社の期待をよそに退職するというのは、企業側としては当然心象は良くないものです。
育休中の転職は、もし、色々と検討した上でも復職後に働き続けることが難しいと判断した場合に、取っていただきたい選択肢ではあります。
育休中ママの転職が難しい理由
そして、ママの転職は、簡単ではありません。特にそれが育休中となれば、なおさらです。その要因は主に3つあると考えます。
■保育園のことを考慮しなければならないから
ママが働くためには、子どもを保育園に預ける必要があります。でも、待機児童問題が大きな社会現象になっているように、保育園に入園するための競争は激しく、正社員としてフルタイムで働いていても、入園することが極めて難しい地域もあります。
もし、育休中に保育園の入園が確定しないまま転職活動をしても、企業が希望する入社日までに入園できるとは限りませんし、現職の退職から次の職場への入社がスムーズにできるとも限りません。
いっそきちんと退職してから転職活動に専念してもいいかも・・・と思われる方も多いですが、残念なことに、「離職して求職活動中」では、「現職フルタイム正社員」よりも、保育園申請時のポイントが大幅に下がりますし、そもそも「離職して求職活動中」では、保育園入園の申請自体ができないという地域もあります。
育休中にママが転職を考える上で、保育園の問題は切り離せないのです。
■働く条件が限られることが多いから
子育てとの両立を考えると、勤務地や勤務時間など、さまざまな前提条件の中で転職活動をする必要があります。最近は、ママを歓迎する求人や柔軟な働き方の求人も増えてきてはいますが、まだ多いとは言えません。その上で、さらに自分の詳細な希望を満たす求人となると、そう簡単には見つからない可能性が高いでしょう。
■転職活動の時間やパワーを捻出するのが難しいから
育休中に転職活動を行う場合は、赤ちゃんを預けて面接に行くことになり、預け先の手配なども必要になってきます。また、職場復帰後に転職活動を行う場合は、忙しい仕事と家事と育児の合間を縫って、時間を作り出す必要があります。ただでさえ転職活動は時間とパワーがかかるものですが、ママの転職活動はこのように物理的・精神的な負担も大きいのです。
これらの難しさがある育休中ママの転職。
育休中に色々な悩みを抱え、このままだと転職するしかないの?と早まる前に、自分にとって何が大切なのか、働く上で何を重視するのか、そもそも転職が本当に必要なのか、といった点を、しっかりと考えていただきたいと思います。
まずは「自分が何を求めているか」を知りましょう
この先のキャリアを描く上で、自分はどんなことを求めているかを知ることは、とても重要です。
仕事よりも家庭を重視したい人もいれば、バリバリ働くことにやりがいを感じる人もいます。どちらか一方ではなく、そのどちらもいいバランスで追い求めたい人もいます。
自分はどんな欲求が強いのか、どんな欲求が満たされれば、幸せを感じることができるのか。そこを明確にした上で、働き方や仕事を選んでいくことが大切なんですね。
では、どうしたら自分の欲求を明らかにすることができるのでしょうか?
例として、筆者が育休中に試してみて、効果的だった方法を、お伝えしたいと思います。
■過去の体験から、自分の中にある欲求を探り、ビジュアル化する
筆者は育休中に、ある本を参考に、自分の欲求を探りビジュアル化するワークを行ってみました。
方法としては、まず、自分が過去にわくわくした出来事を、なるべくたくさんリストアップします。次に、その中から特に印象に残っている体験を10個ピックアップ。その10個の体験の背景にある欲求を書き出していきます。
筆者の場合は、10個の体験の大半を占めたのが「家族と過ごした時間」に関するもので、その背景には「必要とされる」「癒される」「安定している」といった欲求があることに気づきました。
最後に、これらの欲求を自由にビジュアル化します。筆者の場合はイラストで表現しました。自分の上半身の絵を真ん中に描き、心臓の部分にはハートのモチーフを。ハートの中には、家族の似顔絵を描き「癒される」といった欲求を添え書きしました。そこで筆者は、自分にとって何よりも大切なのは「家族との時間」で、その時間を犠牲にしてまで仕事をすることは望んでいない、ということに気づきました。
イラストではなくマインドマップなどで表現する方もいらっしゃるようです。自分の思うままにビジュアル化することで、欲求の優先順位がわかったり、自分の志向がわかったり。自分にとって大切なものが見えてくることと思います。
■モヤモヤな感情に向き合う
モヤモヤする気持ちをそのままにせず、理由を追求して考えてみると、自分の欲求が見えてくることがあります。
筆者はライターを目指し、さまざまなライター案件の求人を調べてきましたが、中には、モヤッとする案件もありました。なぜなのか考えてみた結果、文章を書ければ何でもいいというわけでないことや、記事を書くメディアが掲げる理念も自分にとっては重要であるということが見えてきました。
誰でも、モヤモヤした気持ちに向き合うのは辛いものです。でも、モヤモヤするということは、裏返すと、大切にしたい何かがあるということ。つまり、自分の欲求を知るチャンスなのです。
■人に話を聞いてもらう
自分の考えを人に話し、質問や意見を投げかけてもらうことで、自分の考えが整理されることが多々あります。
筆者はパートナーに話を聞いてもらいましたが、質問に答えるうちに、かなり自分の考えを整理することができました。
パートナーや友人に相談してもなかなか考えがまとまらない、という場合は、プロのキャリアカウンセラーに相談してみるのもおススメです。一人ではたどり着けない気づきを得られることや、第三者・プロだからこそ導き出してくれる可能性があります。
エスキャリアでは「マイ・カウンセラー」というキャリアカウンセリングサービスを行っています。女性のキャリア形成に精通したカウンセラーがご相談に乗っていますので、一人で悩んでいる方は、ぜひ一度、相談してみてください。
私自身、育休中は転職に思いを巡らせていた一人です。
第一子の妊娠前から、キャリアチェンジの転職を考えていたのですが、転職活動を実行したのは、第二子の職場復帰後。思い立ってから、6年の日々がかかりました。
保育園事情、第二子が欲しいという想い、子育てをしながら長く働けるかという観点、やってみたかった仕事へのチャレンジ・・・など、様々な要因が合わさり、6年が経ちました。転職活動を経て、フリーランスのライターとして今は活動をしています。
自分にとことん向き合い、この先のキャリアについて考えてみることは、実は仕事から離れている育休中だからこそできることでもあります。
転職しなければ!と早まってしまう前に、まずは自分と対話し、他者の力も借りながら「自分は何を求めているのか」を明確にしていただき、今、本当に転職が必要なのかを、改めて考えてみてくださいね。
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